今日、コロンビア・ビジネススクールでシーナ・アイエンガー教授を招いてのランチセミナーがあった。テーマは、Global Leadership Challenge for Japanese Companies。
彼女は90年代の半ば、京都大学で動機づけについて研究していた時期があり、日本についてもそれなりによく知っている感じだった。
彼女が2年前に出版したThe Art of Choosing は『選択の科学』の邦題で文藝春秋から翻訳が出ているし、またNHKの番組によっても彼女は日本人によく知られている。そのせいか、教室はほぼ一杯に埋まり、その約7割は日本人だった。
米国人の参加者は、以前日本で勤務をしていたことがあるビジネスマンなどが多かったが、彼女の研究分野についてはほとんどしらないまま、セミナーのテーマにひかれてやってきた連中が多かった。質疑応答で、今度の衆院選の結果がどうなるかなど彼女に聞いても答えられるわけがないのに。
ところで、先々週の金曜日、早朝のコロンビア大学のキャンパスで彼女とすれちがった。金曜日には補講や特別なプログラムを除き、授業は組まれていない。だから、その朝のキャンパスは人出が少なく、とても静かだった。
白杖を頼りにする彼女は、まるで周りの空気を振るわせないよう注意しているかのようにとても静かに歩いていた。その朝はかなり寒かったせいか、彼女はフード付きのコートですっぽりと頭を覆っていた。注意しないと彼女だと誰にも分からないかのように。だからその時は気がつかなかったのだけど、今日見ると、彼女の耳がとても大きいことに気がついた。(なぜか最近、耳が大きい人が気になる)
セミナーで彼女の話を聞いていて感じたのは、とても聡明で、ユーモアがあり、そして何よりも正直な人だと云うこと。知らないことは、知らないと言う。分からないことは、分からないと返答する。飾らないのである。飾っても仕方ないことを経験的によく知っているのだろう。
彼女の先の本の中に、自分が光を失ったときのことにふれて、「失明に立ち向かうことで、わたしは強い精神力を身につけたに違いない(それとも持ち前の精神力のおかげで、うまく立ち向かうことができたのだろうか?)」というくだりがある。
彼女が、質問に対して "I don't know." と、少し困ったような感じで、しかしはっきりと答えるのを聞いていてその言葉を思い出した。