日本入国時、納税申告の対象がないにもかかわらず、なぜ税関の申告書を提出しなければならないのか、ということを書いた。
空港の税関吏は、私にたいしてその根拠として関税法第67条をあげた。その条文は「貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、当該貨物の品名並びに数量及び価格(輸入貨物(特例申告貨物を除く。)については、課税標準となるべき数量及び価格)その他必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない」というもの。
「貨物を輸出し、又は輸入しようとする者」の定義について東京税関に確認したところ、「すべての入国者」がそれに当たるという。入国者が手にしているものはすべて「輸入物」にあたるからだと。
なぜか。たとえスーツケースやバッグを持たず、手ぶらであってもである。すなわち、その時は入国時に身につけている物が「輸入物」とみなされるらしい。
服も着ず、靴も履かず、つまり素っ裸で入国したとしても(実際にありえないが)、日本という国に入国したということは、その手には少なくともパスポートが握られているはずであり、そのパスポートは「輸入物」とみなされる。
だから、すべての入国者が対象となる、というのが税関の解釈である。
そうであれば、「貨物を輸出し、又は輸入しようとする者」などと表現せずとも、「すべての入国者」と書けばよい。が、そうはなっていない。
そもそも、いまでは入国時に税関の申告書を提出させる国は世界の中で極めて少数になりつつあり、その点は日本の税関も理解している。にもかかわらず、先述の関税法の解釈にとらわれて利用者視点の運用ができないでいるのが現実である。