関西万博への反対(不要論)の声が、優に半数を超えている。その理由はさまざまなようだが、そうした「支援のなさ」にも関わらず、大阪や国の行政管理者たちは中止を検討しようとはしない。
先月、こうした世論調査の結果を受けて、万博担当大臣の自見なんとか氏は「真摯に受けとめる」とか何とか答えたが、明らかに口だけ、形だけで実効性がないのは、政治家のいつものこと。
今、大阪で万博を開催する社会全体でのメリットは見当たらない。関西の経済人らは、関西経済活性化の起爆剤などと理由付けしているが、起爆剤(トリガー)には絶対ならない。造って、その半年後に壊す。それだけだから。それでも「造る」と「壊す」ことで儲かる人たちはいる。一部の利権者とその関係業者だ。そのためのものだ。
万博を運営する日本国際博覧会協会は、来場者が約2820万人、経済波及効果を約2兆円と見積もっているが、このときとばかり希望的観測感を最大限に発揮して勝手な積み上げの結果作ったデタラメ数字だろう。まったく内実が見えないのは、五輪の時と同様である。
そもそもその地に誰が行くんだろう。自分も含めて周りに行きたいと言っている人は皆無だ。
僕のゼミでは、学生たちが入って来たとき、最初に因果推論についての基礎的な知識を身につけてもらうことをやっている。マンクテロウの『思考と推論』をもとに、その内容をよりかみ砕いた本を何冊かみんなで読み、正しい推論の考え方や一般的な認知バイアスを知ってもらうようにしている。
そうしたなかで最も基礎的なものとして相関関係と因果関係の違い(混同)をしっかり知ってもらう。人は、つい原因と結果を都合がよいように勝手に結びつけて考える傾向がある。
2025年の万博推進派の考えが、明らかにそれだ。万博をやれば大阪が、そして関西が盛り上がるにちがいない、と(勝手に)思っている。その背景には、1970年に開催された先の大阪万博の成功経験があるからだ。「夢をもう一度」だ。しかしあれとて、万博を開催したから経済が成長したのではなく、国の経済成長の時期にたまたま開催しただけのこと。
万博のようなコンテンツに若い人たちが向かうとは思えないし、70年の万博を子どもの頃に経験した人たちが懐かしさから興味を持っても、果たして開催場所まで実際にどれだけ足を運ぶか。
大阪の人たちはもっと冷静になり、本気で反対したほうがええんとちゃうか。開催の予定まであと1年半しかない。今回の万博開催は、会場地である人工島に、その後にギャンブル場を作りたくて作りたくてしかたない、どうしようもない連中の金儲け手段だというのが明らかなのだから。関西人の常識と行動力が問われている。