2021年7月13日

米マスターカードのTrue Name Card

宇多田ヒカルが、インスタグラムのライブ配信で「日本でどれくらい広まっているか知らないけど、私はノンバイナリーってのに該当するな」と語ったのが話題になっている。

それを聞いて思いだしたのが、今年のカンヌ広告賞(カンヌライオン)で受賞したマスターカードのCMである。

このカード、True Name カードという。担当者は、どの銀行も作らないから私たちは自分でつくったと語る。カード表面にエンボス加工される名前は実名(Real Name)でなくていい、あなたが選んだ自分にとっての本当の名前(True Name)でいいと。 


トランスジェンダーやノンバイナリーの人たちは、クレジット・カードやデビット・カードに記された名前と見た目が異なることで、相手から奇異に見られたり、侮辱されたり、カードの使用を認められなかったり、犯罪者と疑われたり、そうした数々の被差別的な問題やときに生命の危機におよぶような問題を抱えてきたに違いない。

それらに対応するためのマスターカードの試みは、真に多様性を尊重するアメリカらしい発想じゃないか。

日本の社会でも「ダイバーシティー」や「インクルージョン」と言ったカタカナ言葉が跋扈しているが、そこには思想はない。いつものとおり、口先だけだ。日本の金融機関で同様のやり方を取り入れるところがはたして出てくるかどうか・・・まずない。

先月末、日本の最高裁は夫婦別姓を認めない民法の規定が憲法に違反しないという判断を示した(裁判官15人のうち11人が合憲とした)。この国では、選択的夫婦別姓制度の導入すら認められなかった。

この日米の感覚の違いは、ほぼ永遠に埋まることはないんだろう。永遠とまで行かなくても、僕が生きている間には無理だろうな。

試しに、日本で同様のカードを発行する予定があるのかどうか、カード会社に問い合わせてみた。回答は「情報がない」、「分からない」だった。それ以上は話にもならなかった。