2015年2月7日

合理的なのに愚か、それとも合理的だから愚か?

今週の「木村達也 ビジネスの森」は、ゲストとしてルディー和子さんに来ていただいた。取り上げた本は、『合理的なのに愚かな戦略』。


彼女が指摘するところの「合理的」というのは、本来なかなか曲者である。学歴も高く、知識も経験も豊富で優秀なはずの大企業の経営者が、なぜ間違った戦略を実行し失敗してしまうのか。

それは一言で言えば、これまで経てきた成功経験やプライドを守るために、無意識のうちに種々の認知バイアスの罠にはまっているからだ。

加えて、多様性の欠けた環境の中で仕事を長年続けていることで、思考パターンが硬直化していること。顧客のことを「アタマ」で理解しているつもりでも「ハラ」で分かっていないこと。(とりわけ大企業の場合は)予想されるリスクを過剰に評価し、現状維持を好むこと(損失回避性)などが要因としてあげられる。

失敗を犯してしまうのは、人の常・・・。分かってはいても、なかなか一筋縄ではいかないから厄介だ。

イギリス経験論を代表する思想家であるヒュームは、理性と感情の関係を考察し「理性は感情の奴隷である」という有名な言葉を残した。理性に基づく合理的な意思決定と思われるものも、実はそのもとには感情による行動の決定があるというのだ。行動経済学の嚆矢ともいえる。

人がものごとを決定する根本は理性か感情のどちらかではなく、多くの場合、実際のところは感情が決定する。そして、理性はその後付けの理由を組み立てているのではないか。つまり理性が先行するのではなく、理性の役割は「後始末」なんじゃないかというのが僕の考えだ。今日のルディーさんとの話から、そんなことを思った。


今日の一曲は、スウィング・アウト・シスターの Here and Now を選んだ。