駆け足で佐渡に行ってきた。
佐渡の南西部・小木地区には、太鼓芸能集団「鼓童」の拠点があり、彼らが中心に1988年から毎年1回、この地で開催している「アース・セレブレーション(大地の祝祭)」と題したイベントが行われている。
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22日、夕暮れが迫ってきた頃、木崎神社の裏手の小高い城山公演の芝生の上でオープンコンサートは始まった。ステージの後ろは素通しで、ライトに照らされた木々が風に揺れている。うまく計算されたステージデザインに感心する。
地元ということもあり、演奏には鼓童のメンバー全員が参加。巨大サイズの太鼓をはじめとする楽器も総動員で、凄まじくパワフルかつスリリングな演奏を聴かせてくれた。
太鼓というシンプルでいて、聞き手の耳だけでなく体をも振るわせる原初の楽器が生み出す驚異のアンサンブルが佐渡の夜空に響き渡った。なんという幸せな体験。
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海外からの観客が多いことも、この催しの特徴だ。カップルの場合は男性が外国人で、女性が日本人のケースが多い。恋人同士ではなく夫婦。ひとりで来ているのは、圧倒的に女性が多い。それって、なぜだろう?
何人かとお喋りしたが、日本語がほとんどできない人も多い。東京や京都ならそれでも観光客としてたいして不自由はないかもしれないが、ここは「佐渡」である。公演が終わり、島の各地に向けての特別バスが出発したのは、夜9時すぎ(それ以外、交通手段はない)。街灯のない島の漆黒の夜を走るバス。そのバスは、乗客が泊まっている民宿の近くになると停車してくれ、客を降ろしていく。
バスの運転手から、手振りで民宿のだいたいの場所を示されて降りていくドイツからのひとり旅の女性がいた。無事に自分の民宿を見つけられただろうか。民宿のお風呂を使えただろうか、翌日の広間での日本の朝食は大丈夫だったろうか、勝手にいろんな心配が頭をよぎる。・・・だが、きっとすべてなんとかなったに違いない。
公演初日の昼間、ネットで予約しておいたチケットを受け取るために、会場近くの神社に向かった。僕の前には、20代なかばの女性がいた。アジア系の女性だけど、日本人とはなんとなく雰囲気が違う。よく見ると、背負ったザックに太鼓のばちが2本刺さっている。
話しかけるとロサンゼルスから来て、日本を旅しているとか。彼女はアメリカ人だが、両親はベトナムからの難民。学生時代に日本の太鼓を知り、ほとんど恋におちたとか。それから地元でレッスンを続けながら、太鼓のプロの演者を目指している。日本語はほとんどできないが、佐渡に来る前には太鼓を叩きに八丈島と岐阜に行ってきたという。素敵だ。
太鼓の音を聞く者は静寂を聞く ーージョルジュ・ブラック