大阪からの出張の帰途、新幹線のなかで「静かなる男」を観た。2時間少々の佳作で新横浜までの旅程にはちょうど良かった。1952年作だから、撮られてから60年ほど。名匠ジョン・フォード監督が撮りたくて撮りたくてしかがたがなかった作品らしい。主演は、彼とは気心の知れたジョン・ウェインとモーリン・オハラ。おとぎ話を思い起こさせるような美しいアイルランドの地が舞台になっていた。ジョン・フォードはアイルランド系だったのだろう。
印象的だったワンシーン。主演の二人は困難を乗り越えて一緒に暮らすようになる。結婚初夜の場面、ちょっとした夫婦げんかでジョン・ウィンがモーリン・オハラに寝室から締め出される場面がある。彼はどうしたか。迷うことなく、ドアを蹴破って入っていった。 これこそがジョン・ウェインだ。
福島第一原発の現場では、自衛隊や消防による事態回避のための放水作業など命がけの対応が日々行われている。どころがだ。昨日発売のある週刊誌の記事によると、そうした現場の彼らにはゆっくりと体を休める場も与えられていないという。休息と仮眠のための場所は、「Jヴィレッジ」という東電が管理する施設だが、彼らはそこのレストランの床や通路に簡易毛布を敷き雑魚寝を強いられているとレポートされていた。264名が収容できるという部屋が先客によって埋まっているからではない。
以下、その雑誌からの引用になるが、東電幹部は「原発の危機が収束すれば、また使う予定になっています。ですから、たとえ過酷な戦いをしてらっしゃる自衛隊の方々とはいえ、汚く荒らされるのは何とか避けたく・・・・・・」と語ったらしい。そして実際、その施設にある客室、研修室、会議室は、自衛隊員や消防隊員が入らないように施錠されたらしい。
なんということだ・・・。あまりに非人道的すぎはしないか。そうだ、原発と戦う彼らが履いているのは、他に類を見ないほど頑丈なワークブーツだろう。鍵の掛けられた客室のドアなど、それで蹴破ってしまえ。遠慮はいらない。