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2022年9月9日

多住居生活を考えてみよう

日本の人口は、2010年以降一貫して減少している。1世帯当たりの人数が減ることで増え続けていた世帯数も、国立社会保障・人口問題研究所の推計で2023年に5420万世帯を記録したのち減少に転じる。

一方、日本の住宅総数は増えてづけている。2023年には、国内の住宅総数は6550万戸になる。つまり2023年には、国内で1100万戸の住宅が余っている計算になる。日本国中、空き屋だらけだ。

英国で生活していたときに驚いたのは、なんとヴィクトリア朝の頃に立てられた建物がいまもたくさん残っており、内部だけ近代的な設備に入れかえて当たり前のように利用されていることだ。石造りの建物だからできることなんだろう。

一方、日本の多くの家屋は構造が全く違う。日本の気候風土に合わせてということもあるのだろうが、概して耐久性に劣る。田舎にある良くできた古民家などは別として、戦後にこの国に建てられた家はスクラップ&ビルドを前提にして安く、早く、見かけだけそれなりを目的に開発され立てられてきたからだ。

そのツケが回ってきている。空き屋は放置すれば、あっという間に建物は荒れて傷む。誰も住まなくなった家屋をどうするかという対応策は大きく3つ。居住者を見つけるか、改築して店舗や事務所などに転用するか、さもなければ解体して一旦更地にするか。

ただ、店舗など商業用に転用できる空き屋はごく1部だろう。また解体して更地にももどすには費用がかかるだけでなく、地目が変わり固定資産税が増す。二の足を踏む土地所有者が多い。

そして今後増え続ける空き屋をどうするかは、相続する所有者だけでなく、地域社会や自治体にとっても頭の痛い問題になっている。

まずは自治体が安く借り上げて、借りたい人に貸し出してはどうだろう。もちろん立地や環境にもよるが、セカンドハウスとして多住居生活をしてみたいと考えている日本人は増えているようだし、今後日本が移民を本格的に受け入れるようになれば、そうした人たちに使ってもらえる。移民政策の本格的導入は絶対に必要になるはずだ。

一旦建物の基礎がダメになった住居を修繕するのは大変だ。急いで官民で対応に動く必要がある。

2021年4月1日

セミ・ノマドという生き方

数日前、映画「ノマドランド」について書いた。その続き。

昨年初頭からのコロナ禍があって、デジタルノマドという言葉が聞かれるようになった。パソコンやスマホを携行、ネット環境を確保することで場所に縛られることなく仕事をしている人たちを指している。

リモートワークで仕事が進むのであれば、人は文字通りロケーション・フリーになれる。養蜂家のようにミツバチと花を追って日本列島を南から北へ移動するなんてのもありだ。

「ノマドランド」でのノマドの生活に欠かせないものは、移動手段かつ寝泊まりするためのバン(車)だったが、それは広大なアメリカの地理的条件があるから。日本なら車以外の移動手段であっても、たいていの所へ行ける。寝泊まりするのもホテル、民宿、民泊、シェアハウス、友人の家などいろいろある。

そうやって年のうち数ヵ月をセミ・ノマドとして過ごすのは悪くない。

またノマドではないが、多住居生活というライフスタイルがある。家やマンションなどを複数箇所に持ち、それらを行き来しながら暮らすやる方だ。夏のあいだは避暑地の別荘で過ごす、という昔からある暮らし方もそのひとつ。

そうした暮らし方に人々が目を向けるようになったきっかけのひとつは、3・11だ。震災で家を失ったり、放射能の汚染地域に指定された人たちのその後の暮らしを知り、いざというときのために第2、第3の家の必要性を我々は感じることになった。

いまや日本国中に空き屋があふれているんだから、各地できっと手軽な値段で家を取得できたり、借りられたりできるはずだ。

2017年1月29日

人口減と地方について、また考えてみた

今日の「木村達也 ビジネスの森」(FM NACK5)のゲストは、『人口減が地方を強くする』(日経プレミアムシリーズ)の著者で、日本総研上席主任研究員の藤波匠さん。


日本創成会議の推定では、896の市町村が消滅するとされている。しかし、それらはいきなりその数の市町村で人口が完全に消えてしまうと云うことではない。実際は、地方自治体が従来の行政サービスを提供できなくても、そうした場所に住み続ける人は残り続けるだろう。それが人のいとなみだ。

多住居生活という暮らしの仕方が、これから進んでいくかもしれない。全体では国の人口は減少するが、ゆとりのできた空間をみんなでもっと活用する手はあるはずである。余暇を過ごすなり、期間限定で仕事をするなり、ボランティアという方法もあるだろう。そうすることで、人口減少地の活力を保つことができるかもしれない。

ただし、国の移住促進策にはわれわれは注意する必要がある。地方の村落の延命措置のために、国が一時的な経済支援を人参としてぶらさげ、都会から若い夫婦などを移住させるのは長期的には誰のためにもならない。

引っ越し費用を持ちますとか、最初の何年間は家賃を大幅に割り引きます、そんな目先の話でやってきた人たちは、いずれそうした「お得さ」が薄れた時には別の場所へ移ってしまう。生きていく場所として、どのような生計の手段をその場にみんなで作っていけるか、そこがポイントだろうと思う。


今日の一曲は、RCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」。



2015年10月6日

多住居生活のススメ

10月3日(土)放送の「木村達也 ビジネスの森」には、『週末は田舎くらし』(ダイヤモンド社)の著者、馬場未織さんにゲストに来てもらった。


彼女は東京生まれ、東京育ち。ご主人も同様らしい。都会で生まれ育ち、帰郷する田舎を持たずに育ったわけだが、そのことで残念に思ったり、悲しいと感じたことはなかったという。

ところが、彼女の長男が無類の生き物好きで、どうもそうした彼を自然の中に「戻してやりたくて」南房総の中山間地の土地と農家を手に入れたという。

家族5人、平日は自由ヶ丘近くの家で過ごし、金曜日の夜になると家族プラス猫2匹がクルマに乗り込み環状八号線を羽田方向へ向かい、アクアラインを抜けて南房総のもう一つの家へ。

8700坪という広大な土地には小川が流れ、ちょっとした山もあるらしい。田んぼや畑だけでなく、ほとんど手つかずのような自然に溢れている。

今後は、子どもたちが大きくなるにつれて家族5人で毎週南房総へ、とは行かなくなるかもしれない。その時は、馬場さんご夫婦2人だけでその地を訪ねることになるのだろう。しかし、その時はその時でいいように思った。

家を複数持つというと、なんだか金持ちっぽくて贅沢に聞こえるかもしれない。だが、これから人口の減少と高齢者の暮らし方の変化によって、全国津々浦々で大量の無人住居が出てくることが予想される。

そうした家は、これまでになく安く購入することができるようなるはずだ。あるいは、買わずに借りるという手もある。田舎の家だと田んぼや畑が付いてくることも多いだろう。都会人たちは、週末や休みをそうした土のある場所で過ごせばいい。

そして逆に、田舎で普段暮らし、仕事をしている人たち、特に若い人たちは週末を都会の空き屋をうまく使いながら楽しめばいいのだ。


そうして、誰もが多住居生活をもっと簡単にできるようになればといいと僕は考えている。誰も住まなくなった家はあっという間に荒れ果て、一旦そうなるとなかなか人が暮らそうと思う状態には戻せない。

それに何よりも、生活空間を変えるといとも簡単に人の気持ちは変わる。これは僕自身、実証済みだ。リフレッシュできるし、新しい刺激をそのなかで確実に得ることができる。

国は、そうしたセカンドハウスの取得と利用を促すよう税制などを改定すべき時に来ていると思うのだが、どうだろう。もっと多くの人たちが、週末は田舎暮らしを楽しむようになればいいし、あるいは田舎にこだわることもなく、週末はもう一つの暮らし、となればそれはそれでいい。


今朝の番組での選曲は、Jessey Norman Sings Michel Legrandから「おもいでの夏」。