シンガポールでは移動手段としてのグラブがとても便利だ。アプリが使いやすく、仕組みがよく出来ていることに感心する。あくまで個人の印象のレベルだが、運転手は既存のタクシーに比べて全般的に若く、対応やサービスもよい。
ぼくがこれまで乗ったグラブの運転手は、全員が日本で言う「脱サラ」のドライバーだった。
働いている時間が長いことをぼやいたりしているものの、彼らの全般的な仕事の満足度は高い。まず、働く時間も含めて自分で自分の仕事をコントロール出来ること、組織に縛られない気安さをみんな強調する。ストレスが極度に減ったことを喜んでいた。
だから、客に対するサービスも向上する。そして乗客の満足度も高まる。客は降車後にアプリへ送られてくる領収書を確認し、ドライバーを評価する。乗せた客からの評価がよければ、ドライバーは仕事がさらにやりやすくなるだけでなく、気持ちも良いはずだ。いいサービスを続けようと考える自然な動機づけになる。と、仕組みがよく出来ている。
今朝、空港までの移動で乗ったGrabドライバーは、母方の祖父が日本人だと言った。第二次戦争のとき日本軍の兵士としてシンガポールに送られ、終戦後そのまま残ったのだという。つまり、シンガポール残留日本兵というわけだ。
その人は彼が小学生の頃に亡くなったらしいが、子供の頃に抱かれたときのそのお祖父さんの手はまるでアスファルトの道路のようにザラザラだったという。戦争が終わった後、シンガポールに残って以来、生業としてずっと金属を磨く仕事を続けていたからだという。
そのお祖父さんは日本には一度も戻らなかった。母親に、なぜ彼は一度も生まれ故郷(日本)に帰らなかったのか聞いたことがあるが、教えてくれなかったという。
そんな話を助手席に乗って聞けるのも、Grabで移動する理由のひとつになっている。