政治家や官僚が話しているのを聞いていて、何が言いたいのかよく分からず、ついイライラすることがある。
理由はたくさんあるが、そのひとつが彼らが頻繁に使う「承知」という言葉にある。
例えば、LINE利用者の個人情報が長年にわたって中国にある業務委託先企業でアクセス可能になっていたことを巡っての政府会見で、加藤勝信官房長官は政府高官の情報が中国側に流出したかどうか問われ、「事実関係をまず確認しており、必要に応じ適切に対応していくことになると承知している」と述べた。
ヘンな日本語。普通なら彼の回答は「事実関係をまず確認しており、必要に応じ適切に対応していく」でよい。
また、菅首相がLINEを利用しているか記者団から問われた際には、「使っておられるか承知していない」と回答した。
辞書によれば、承知の意味には以下の3つがある。
①知っていること。「いきさつは承知している」
②聞き入れること。「解約の件は承知できない」
③許すこと。「そんなことしたら承知しないぞ」
さて官房長官の「承知」はどれだろう。
政治家や官僚が「承知していない」を使っている際には、注意する必要がある。「知らない」ことを言っているのか、「聞かされてない」と言っているのか、聞かされてるが「よく理解していない」と言いたいのか、理解しているが「自分は聞き入れてない」と言ってるのか、あるいは「許さない」と言ってるのか。
どれも「承知」の一言で彼らは表現する。きわめて曖昧で玉虫色だ。真に意味するところは、われわれ国民には到底分からない。
そういえば、「桜を見る会」に関係する懇親会について、政治資金収支報告書に3000万円ほどの収支を記載しなかったとして、安倍前首相の公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で略式起訴された際、安倍前首相はその3000万円の原資について「承知していない」と言い張った。
自分の事務所内で3000万円の金が動いているのを一切知らないとは考えにくい。だから彼は、「知らない」ではなく「承知していない」と繰り返した。政治家や官僚が昔から使う「記憶にありません」を繰り返すのと同じレトリック。
相手に分かりやすく、普通のことばで考えを伝えること。それが当たり前だと思うのだけど。