サントリー芸術財団50周年記念の催しとして、佐藤オオキさんのnendoとサントリー美術館が企画した information or inspiration? 展が乃木坂で開催されている。
出品点数は22点のみ。しかもどれもサントリー美術館がもともと所蔵している工芸品だ。ポイントはそれらを右からと左からの2つのルートで見て「感じ」「考える」というところにある。
「最初は黒のルートでどうぞ」と勧められたのは、22点の工芸品を観客が自分の眼(まなこ)で虚心なく鑑賞するためにしつらえられた展示。極力、ものとしての作品以外の情報が観客に伝わらないように工夫されている。
一方、白のコースには、それら工芸品が供えている様々な意匠や工夫が鑑賞する人に分かるような説明的な展示が施されている。それらの作品についての詳細な説明が歴史的、工芸的な側面から文章とイラストでなされている。
これら黒のコースが inspiration、白のコースが information という訳だ。展示会タイトルの副題は「左脳と右脳でたのしむ日本の美」とあり、白コースが information を表す右脳コースで、黒コースが inspiration の右脳コースを示している。
脳がまたブームである。人類にとって宇宙とならぶ未知の領域だけに、テーマとしてはまさに鉄板ネタともいえる。
経営学の分野でもそれをネタにした本が最近またぞろ登場してきている。大学での同僚の内田さんが出した「右脳思考」や佐宗邦威「直感と論理をつなぐ思考法」などがそうだ。
前者は分かりやすく右脳と左脳という言葉を直裁的に用いていて、後者は右脳、左脳という用語は用いず直感と論理と表現している。また、前者は右脳を優先させる思考によって、後者は直感と論理をつなぐことによって新たな視点を手に入れ、ひいてはビジネスの成功がもたらされると説く。
米コロンビア・ビジネススクールのウイリアム・ダガンが2010年に出した「戦略は直観に従う」につながるビジネス書だが、日本でのはしりはといえば30年以上前に脳生理学者だった品川嘉也さんが書いた「右脳ビジネス」だろう。脳が永遠のテーマと言える所以だ。
左脳ではなく右脳を活かせとか、直感(右脳)と論理(左脳)をつなげとか言われても、実際どうしたらよいものか悩んでしまう。右手左手、右足左足のように本人に見えるわけじゃないからね。