2017年9月30日

休み方改革とロケット旅行

新聞で「社員の休み方改革加速」という記事を読んだ。

ある新聞社が実施した社長100人アンケートをもとにしたもので、対象となった企業の9割が社員の有給休暇取得率を引き上げる方向性であると回答している。

長時間労働是正が目的とされているが、当時新入社員だった女性が自殺した違法残業事件が起きた電通では、有給休暇取得を義務化する方向で進めているらしい。
そもそも有給休暇は、働く人たちの権利であって義務ではないはず。電通で起きたように実際になされた残業がその通り記録されていなかったり、上司からの圧力によって無理やり残業が行われていたといった点は会社側の責任によって改善がなされなければならない。
だが、そもそも有給休暇を取るかどうかは社員次第。決して義務ではないはず。あくまでも権利である。もし会社が有給休暇取得を義務と考えるのであれば、当初から会社の就業日数を減らせばいいのである。
なぜこんなちぐはぐなことが発生するのだろう。その社長アンケートとやらによると、改善すべき項目として管理職の意識改革が79%、職場風土の改善が78%といった数字が挙げられている。管理職の意識改革は確かに企業が行うべきことかもしれない、しかし職場風土の改善をその企業が自分たちでどのように行うのだろう。
「社員の休み方改革」という名称も変だ。もし企業の視点から言うのであれば、「社員の休ませ方改革」ということになるのだろう。しかし、それもどうもしっくりこない。休もうが休むまいがそれは社員の勝手である。
有給休暇の取り方までなぜ会社が、しかも会社のトップが考えなくてはならないのだろう。これはある意味で、未だ日本の企業では、多くの社員たちの生活のほとんどが会社に依っているということの証左だろう。
同じ新聞の見開き対向面に目をやると、びっくりさせられる記事が目に飛び込んできた。

小さな囲み記事だが、そのタイトルは「ロケットで海外旅行」とある。イーロン・マスクが率いる米国の宇宙開発ベンチャー、スペース X 社が最大240人収容できる超大型ロケットを使って2022年以降に長距離旅客輸送に進出することを発表した。

最高時速は2万7000km で、宇宙空間を通過し地球上の主要都市を30分程度で結ぶ。実現すれば、東京とアジアの主要都市は約30分前後で移動できる。ニューヨークとロサンゼルス間は25分。山手線で新宿駅から新橋駅まで移動するのと同じ時間である。

今後、大都市の沿岸に小規模な海上発着台を建設するという構想である。まさに夢のような話にも聞こえるが、2022年といえばわずか5年後の話。スペース X 社の社員や経営者は、社員の休み方改革など考えてる暇は微塵もないはずだ。

経営者がやらなければならないことは、社員の有給休暇取得率を気にしたりそれをいかに上げるかに時間を割くのではなく、グーグルのエリック・シュミットらがいう「スマート・クリエイティブ」という、新しいやり方を自分でつくり出すことができる人材を社内に増殖させること。そして彼らに責任と自由と彼らが楽しめる仕事を与え、思いっきりそれに没頭させることだ。

社長が社員の勤務形態を考えることに時間を費やしたり、出退管理を気にしていてはいかんのである。そんな企業は早晩市場から消えることになる。