これはある銀行の副頭取だった人物が、再建のために移った鉄道会社の経営者に就いた際に社内外で言っていた言葉とか。
よく耳にする言葉で、「いまは耐え忍ぼう、やがては希望の光が差してくる」と人を鼓舞するときに用いられる言い回しだが、実際は必ずしもそうではない。
『More Very Finnish Problems』というペーパーバックをめくっていたら、When it's so dark, you don't know whether you've overslept or under-slept(こんなに暗いと、寝坊したのか寝不足なのかわからなくなる) と題する文章が目に付いた。
この本、フィンランドのヘルシンキ空港で乗り継ぎの際に時間つぶしのためにキオスクで買った一冊。
なぜフィンランドかというと、昨日のニュースで、3年ぶりにフィンランドからサンタクロースがフィンエアーに乗って(トナカイではなく)成田空港に到着したというのを見たから。
毎日新聞社のサイトから |
先の本によると、10月から3月までフィンランドの北部ラップランドでは日が昇らない。
そのためこの季節には、SAD(Seasonal Affective Disorder 季節性感情障害)に悩まされる人が多く発生する。これは、うつ病のようなもの。症状として疲労感、睡眠過多、倦怠感、糖分欲求、悲壮感、罪悪感、自尊心の喪失、短気、社交の回避傾向などが現れる。
かなり深刻だ。だから、フィンランドに限らず、北欧諸国では長く暗い季節に自殺者が多く発生するんだろう。夜が過ぎてもいつまでたっても日が昇らないからだ。それも何ヶ月という期間にわたって。
「朝の来ない夜はない」が口癖の某鉄道グループの経営者は、そうやって社員と自分を励ましているのだろうが、容易に朝がくることを求めてしまうと症状はさらに悪化する。
何日も何ヶ月も日が昇らなくても、平気の平左で生きていくしかないことだってよくある。
そうした耐性が、これからの日本人には強く求められるようになる。たとえ朝が来なくても、人は生きていかなければならない。気の利いた台詞は、時として状態を悪化させるだけである。
現実から目を背けた、一見「気の利いた」台詞によるマネジメントは、周りの未来を狂わせることになる。