2022年1月2日

ダグラス・アダムズの法則

30代半ばの知り合いが昨年末でそれまで勤めていた会社を辞めた。今年から別の業界に飛び込むらしい。

彼の年齢から、ダグラス・アダムズの法則と呼ばれる考え方があるのを思い出した。

それは、「人は、自分が生まれた時にすでに存在したテクノロジーを自然の世界の一部と感じる。15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じる。35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じる」というものである。

人は35歳までは新しいことを受け入れることができ、そこに魅力的なものを感じる事ができるが、35歳を過ぎると周りに現れた新しいテクノロジーに対しては不安や不自然なものを感じてしまう性向があるということらしい。実は法則といっても科学的な根拠があるものではないのだが。

35歳と云えば、人は35歳までに転職をした方がいい、ということを僕が初めて聞いたのは40年近く前のこと。大学を卒業して初めて仕事に就いた広告代理店の先輩から聞いたのを覚えている。

それは、若いときは人は誰でも自分にいろんな可能性を感じて新しい事にチャレンジしていきたいと思うが、35歳を過ぎるあたりからたいていの人は自分にできることでできないこと、自分に向いてることと向いていないこと、可能性と不可能性のラインのようなものがわかってくるんだよという話だった。

転職をするとしたら、少なくとも35歳までにするべきだというのがその時の彼のメッセージの一つだった。彼自身がその当時30代半ばで、いろいろ思うことがあったのだろうと今にして思う。

そうしたアドバイス(?)があったからというのではないが、僕はその後30歳までその会社に勤め、転職した。それまでにも何度も会社を辞めようと思ったことはあったが、なぜか親身になって入社時から相談にのってくれた彼の顔が浮かび、30歳になるまでその会社で仕事をした。

いま世間では「45歳定年」という話があるが、そのことについて僕は基本的には結構なことだと思っている。いや、正しく述べるなら、制度として45歳で定年にするというより、少なくともそのあたりの年齢でビジネスマンは自らいくつか組織を渡り歩いていた方がいいということだ。

もし仕事は同じだとしても、働く場所や環境を変えた方がいい。新しい環境で、新しい人たちと働くことで新しい発見があり、新しい事を学ぶことができる。だから成長することができる。

同じ会社で定年まで働くのが間違ってるとは言わないが、その場合でもせめて周りの環境を意識的に変更することで人生はより豊かになる、というのが転職を繰り返してきた僕の経験からの考えである。