2024年10月5日

NHKはカスハラを勘違いしている

東京都議会で、カスタマーハラスメント(カスハラ)の防止に向けた条例が全会一致で可決したというNHKのニュース。freeeという都内にあるネット企業の顧客からその会社の窓口にかかってきた電話の録音が番組内で紹介されていた。

その乱暴な話し方の方に意識が向いてしまうので、音声を消してみた。通話の内容は画面に表示されているとおりだ。

NHKの画面作成担当が何を思ったのか、ご丁寧に文字を躍らせるような演出をしているのが余計だが、この客が言っている内容そのものが果たしてハラスメントにあたるものだろうか。

ぼくには、彼が相手(企業の担当者)を傷つける暴言を吐いたり、彼(女)のプライバシーを犯すことをしているとは思えないのだ。彼は、ただとにかく腹を立てて、猛烈に怒ってどなっているだけだ。いささか常軌を逸しているが。

私が気になったのは、電話で強烈な苦情を言っているこの客がなぜこれほどまでに怒っているだろうということ。ここまで彼に強い怒り引き起こした原因が必ずあるはず。それを知りたいのだが、何も説明はなし。番組内で客の音声を流し、これはカスハラだ、と決めつけているだけ。報道としては片手落ちで明らかに配慮に欠けている。

先の都条例では、カスハラを「顧客から就業者に対し、業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するもの」と定義している。

また現在では、一般的な定義として、カスハラとは「顧客や取引先が立場を利用して店員や公務員に暴力をふるったり、理不尽な要求をしたりする迷惑行為」とされている。

例えば店員に土下座による謝罪を求めるなどは、明らかに就業環境を害する迷惑行為といえる。だが、このfreee社への電話で男が言っている内容は、そうしたものとは異なる。

この男性キャスターは、客からの通話の音声を紹介したあと、「こうしたカスタマーハラスメント、いわゆるカスハラを防ぐ全国初の・・・」と、さも当然のように言ってるが、自分の頭ではものを考えていない典型だ。

東京都は議会での制定を受け、本年度中に対策を盛り込んだ指針を示すとしているが、さてどんな指針が役人から提示されるのか。また、それを社会はどう受け取るのか、興味があるところだ。

そもそも暴力や暴行はハラスメントではなく、違法行為。それが誰からであろうが、警察にすぐに通報すればいい。スタッフが我慢する必要も、また我慢させられる必要もない。

また理不尽な要求に対しては「ノー」とはっきり言うことだ。ここにもハラスメントの入る余地はもともとないはずである。

僕自身は、カスハラ(Customer Harassment) という 、日本独特の概念がこれほど一般化するところに現在のこの国のオカシサを強く感じるとともに、日本企業が提供するサービスの品質が全体的に明らかに低下していることが一方で気になっている。

先日、あるカード会社が送って寄こしたサービス改定の文書に不明な点があり、問合せをした。電話番号をその企業のサイトで探したが、なかなか見つからない(見つからないようにしているとしか思えない)。やっと見つけて電話したら「ただいま電話が大変混み合っており・・・」で通じない。

何度もかけ直してやっと通じたら、「本人確認」とやらで、姓名、本人かどうか、生年月日、住所、引き落とし先の銀行名と支店名を言えと言われた。確認したかったのは彼らが送ってきた文書に印刷された文言についてであって私個人の取引内容とはまったく関係がないのだが。

しかたなく「名前は・・・、住所は・・・」とすべて答えてゲートキーパーは越えたものの、こちらが求める回答を出せる担当にはたどり着けない。なんとももどかしい。やっとそれらしい部署に電話が回っても、担当者が席を外しているので後でかけ直させるといわれ半日以上待つも一向に折り返しがないままその日が終わってしまったーー。 

自分たちが客に送った手紙の内容について問われ、容易に回答ができない。これをお粗末といわずして何という。

文書の発送日を9月吉日とするものどうかと思う。結婚式の招待状じゃないんだからさ。 日付を書けよ。