2024年1月29日

電話に勇気は必要か

作家の青山七恵さんが書いた「電話の贅沢」と題するコラムを読んだ。その中に、こんな1節があった。

・・・私はいま、電話が好きだ。電話には、スリルがある。一度つながってしまったら、やぶれかぶれでも一発勝負でどうにか乗り切るしかないという、綱渡り的、即興劇的なスリル。同じ意思伝達の手段であっても、何度でも書き直しができるメールとはぜんぜんちがう。

やぶれかぶれの一発勝負とまで力まなくてもと思うが、気持ちはよくわかる。電話にはそれなりの緊張感がある。相手が出るのか、出ないのか、話しやすい状況か、そうでないか、機嫌はいいか悪いか、そうした思いが頭を巡る。相手が電話に応えるまでわからない。

若い人たちはもう電話はしないという。理由は、相手にとって電話は突然なので失礼だからとか。それはそうだが、それが電話というものである。

実際のところは、相手のことを考えているようで、自分のことを考えているんじゃないのか。電話をかけられた方が迷惑に思うことがあれば、自分が気が利かない人と思われるのが厭なだけじゃないのかな。

そのうち、「昨日、〇〇に電話したらね・・・」なんて言ったら、相手から「あなた、勇気あるね」と感心されるようになるかもしれない。

確かに電話は突然かかってくる。だから、出られるときは出る、出られないときは出ない、でいいんじゃないのかね。メールではうまく伝えられないことだってあるはず。電話をまったくしないという人たちは、そうした思いを何も持っていない人たちなんだろう。