哲学本が人気だ。ビジネスマンを中心に、そうしたジャンルが今売れているという。ただし哲学書そのものではなく、哲学とは何かをさらっとエピソードや身近な問答を通じて分からせる入門本だ。
どこまで深く入って行くかは別として、哲学に興味を持つのは悪くない。そうした読者がどういった層なのかは詳しく知らないが、みんな悩んでいるのだ。そして、彼らはその答えが<哲学>にはあるのではないかという強い期待感というか、そこにすがっている感じがする。
「哲学って何」かを囓ることで、悩みの解決法を手にできれば楽なんだろうけど、実際それは無理な相談だ。哲学書を数々読みあさっても無理。哲学者自身がそれを分かって、しかも読者を救済するために書いているのではないのだから。哲学者は精神分析医ではない。
タモリは「教養なんてのは、大人のおもちゃである」というようなことを言ったらしいが、それはかなり正鵠を射ている。哲学は悩む人がすがりつくロープでもなく、天から垂れ下がった蜘蛛の糸でもない。
大人にとっての哲学というのは<おもちゃ>くらいの軽い気持ちで付き合うのが正しい付き合い方なのである。そうすると、とても楽しい。