2021年12月6日

DXは、デラックスだ

最相さんの『辛口サイショーの人生案内DX』(ミシマ社)が面白かった。


新聞に連載されていた人生相談をもとに再構成したもので、相談の中身はもちろん真面目なものばかりなので「面白かった」という感想は不謹慎に聞こえるかも知れないが、最相さんの相談者の甘えをぶった切る回答姿勢は新鮮だった。

ところで、この本のタイトルのDXには<デラックス>とルビが振ってある。今流行りのデジタル・トランスフォーメーションではないところが昭和で、僕が気に入ったところ。

そもそも、今ごろデジタル・トランスフォーメーションが重要などといって口角泡を飛ばしている国家も企業も、それだけで自分たちが既に周回遅れなのが分かってるのかね。

たとえば承認プロセスのハンコをどうやってなくすかとか、紙の書類を電子化して効率化を図るなんてことを経営者が考えている段階でアウトだ。沈みゆくタイタニック号の甲板の上でデッキチェアをきれいに並び直しているようなもの。やってる感はあるが、それだけ。

大切なのはMX、つまりマネジメント・ トランスフォーメーションなのだよ。

たとえよく切れる包丁を手にしたからといって、それで素人がいっちょまえの板前仕事ができるわけではない。優れた料理の提供に必要なのは、そして繁盛する店をやり繰りするのは、客が何を欲しがっているかという理解とそれに応える技術、そして豊かな経験と想像力なのだ。 

それをなしに、日本の経営者は、何か「魔法の道具」さえ手に入れればすべてうまくゆくと考えてはいないだろうか。