2017年5月21日

亀とジェット機

先週と今週、「木村達也 ビジネスの森」にゲストとして元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄さんをお招きした。


エルピーダメモリは、1998年に日立とNECの半導体(DRAM)部門が統合してできた会社。設立後うまくいっていなかったその会社に、坂本さんが2002年に再建を託されて社長に就任し、その後10年間にわたり同社を率いてきた。

坂本さんの企業人の原点は、体育大学の卒業後に義理のお兄さんの紹介で入社した日本テキサスインスツルメンツ社。そこの倉庫番からスタートし、25歳で経営企画部の課長に。それまでの上司が部下になった瞬間だった。最初は双方ともやりづらい感じもあったが、両者ともすぐに慣れていったという。肩書きは、単なる「役割」なのである。

日本企業とアメリカ企業の経営の違い。多くの違いの中でも決定的なのがスピード感の違い。両企業をよく知っている坂本さんから見た場合、その差は亀とジェット機くらい違うと云う。

コングロマリットの事業形態がその根底にある。種々なビジネスに関して、トップがすべてを理解できるはずがなく、だからこそクイックな判断ができない。社長がビジネスに精通していなくて、なぜ適切な経営判断ができるのか。切り離すべきだというのが坂本さんの考え方だ。

スペシャリストとジェネラリストについてもお話をうかがった。日本企業は多くの社員がゼネラリストを目指しすぎるので、部長になったとたんに専門性を鍛えてこなかった人たちはリストラの対象になってしまう。

企業に必要なのは、一部のジェネラリスト。坂本さんが語るように、その以外の人たちはスペシャリストを目指すべきなのだ。

まずは専門性を磨くこと。その後、組織内のポジションと役割に応じて、ジェネラリストとしてのキャリアを磨いていって経営者になる人材が出てくる。多くの日本のサラリーマンは専門性のひとつも持たないで最初からジェネラリストを目指すケースが多いが、それでは仕事にならないのである。

今朝の一曲に選んだのは、スティングで「Shape of My Heart」。