『松下で呆れ、アップルで仰天したこと』
竹内一正『松下で呆れ、アップルで仰天したこと』日本実業出版社、2003
昭和32年生まれのビジネスマンで、松下電器産業とアップルコンピュータを経験した著者によって、極めて日本的な松下電産と、アメリカ的、というより、その中でもとりわけ自由で創造的な組織であるアップルが対比されている。社会人として松下で育った著者が、アップルという全くの異文化、別世界で出会った驚きや戸惑いの数々が読んでいて楽しい。
阪神タイガースファンとアップルファンの共通点には唸った。阪神球団幹部は誰一人として、阪神が優勝するために何をすべきか、何が問題なのかを真剣に考えていない。それを日頃から考えているのは、阪神ファンだけだというのだ。そして、アップルはというと、その企業としての行く末を真剣に心配しているのは、アップル社の経営陣ではなく、アップルファンだけだという。まあ、そんなこともないだろうが、でもいかにもと思わせられる。これが、本物のブランド・ロイヤルティというものだ。
著者がアップルジャパンで働いている日本人を2軸で4分類している。第1の軸は、アップルジャパンに入る前の企業が日本系企業が外資系か。第2の軸は、アップルでの仕事の営業かマーケティングかある。もっとも日本的なのが、元日本系企業出身で、現在営業部門につとめている人。仕事は国内での付き合いがほとんどのため、外資系といっても英語を使うことはほとんどなく、人間関係も対日本人である。その対抗が、もともと外資系で、現在マーケティング部門で働いている連中。外資系のドライな環境に慣れていて、本社との英語でのやりとりが求められる。外国で教育を受け、普通の日本人とは幾分精神構造が異なっている。
単純な分類ではあるが、この4分類は僕が知る限りでも確かにしっかりと類型化できる。自分はというと、もともとは結構ベタな日本企業で社会人としての基本を叩き込まれた後、外資系企業のドライな世界をいくつか渡り歩いてきた。どちらの良さ、悪さも知っているつもりだが、最初が日本系企業でよかったとつくづく思うことがある。
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