昨年6月、カナダに本拠地をおく世界的に有名なサーカス集団であるシルク・ドゥ・ソレイユが経営破綻した。
いや、シルク・ドゥ・ソレイユをサーカスと呼ぶのは正しくないかも知れない。ジムナスティック(体操)であり、オペラであり、ロックのライブであり、いわば総合エンターテインメントと呼べる興行システムだった。
ステージに登場する人物は、サーカスがそれを芸人と呼ぶのが今もふさわしいのに対して、シルク・ドゥ・ソレイユはアスリートだろうか。そのステージは、磨き上げられた体操選手の演技を見ているような感覚が強かった。
音楽を担当する生バンドがステージに陣取り、重要なアクターとしての役割を果たす。一方、象やライオンなどサーカスにつきものの動物は一切登場しない。彼らは複数のチームを編成し、ラスベガスの常設ステージをはじめ世界各地でショーを繰り広げていた。あの石岡瑛子さんが衣装デザインを担当した演目もあった。
ビジネスモデルという言葉を用いるとするなら、シルク・ドゥ・ソレイユのそれはサーカスとは違い、近代的かつ合理的、サーカスに比べて金がしっかり儲かる仕組みができていたはずだったのに。それが半年間の新型コロナウイルス拡大によって、なぜもろくも経営破綻したのだろう。
一方のサーカスだが、先日横浜で公演中の木下大サーカスを観に行ってきた。場所は横浜みなとみらい地区。アンパンマン・ミュージアムの東隣の土地にテントが張られていた。(アンパンマンのミュージアムがあるってことを初めて知ったヨ。)
みなとみらいに設置された木下サーカスのテント |
シルク・ドゥ・ソレイユのショーは、これまでいくつも観てきた。アスリートの驚異的な身体能力と人間技と思えないような磨き込まれたテクニックに息を呑んだ経験は強く記憶に残っている。けれど、なんだか見ていてテンションが上がりすぎて疲れてしまう感じもあった。
その点、木下サーカスには息を呑ませるスゴ技もたくさんある一方、言い方は少し変かも知れないが、宴会芸的ななんだかホンワカした芸もある。それらはパフォーマンスと呼ぶより、どちらかといえば演芸なのだ。
シルク・ドゥ・ソレイユにはない、サーカスならではの動物芸も登場する。シマウマ、象、ホワイトライオンなどが現れると会場の子どもたちは大喜びだ。
猛獣を含むこうした動物を使いながらのツアーは本当に大変だろうと思うけど、120年近い歴史を持つ木下大サーカスは、動物たちが見せる芸がサーカスに欠かせない要素であることをよく知っているんだろう。
僕の席は、最前列のステージ向かって左サイド。空中ブランコで使うタワーのすぐ脇だったのだけど、ふと気づくと隣にさっきステージで芸を見せていた若い娘さんが何か小道具を手に待機していて、後の演目でステージに立つ仲間にそれを途中で手渡すなどサポートしていた。
そのほかにもステージで使うロープを脇で引っ張ったり、あらゆる事を団員が相互で手分けしてやっているのが見て取れた。
それだけで家族的というのは変かもしれないが、印象として中小企業に所属してる仲間たちがみんなでステージを盛り上げようと力を合わせてやっているという感じが強く伝わって来た。これからもずっと頑張って欲しいナ。
事務所の脇に「新人募集」の張り紙が |