2018年6月10日

犬ヶ島

「犬ヶ島」は、「グランド・ブタペスト・ホテル」を作ったウェス・アンダーソンによるストップモーション・アニメ映画の傑作だ。


ストップモーション・アニメーションは、その名の通り、人形など制止している物体をひとつひとつコマ撮りして製作するアニメーションである。膨大な時間がかかるのことは、容易に想像できる。その一方で、有りモノの俳優やキャラクターに拠らない自由な発想と造形でストーリーを流していくことができる。

この映画、見れば分かるが妙なバイアスがいっぱいかかっている。日本人の観客にはうれしいバイアスだけど。

まず舞台が日本。メガ崎市という街がひとつの舞台。そして、昭和の時代をもとにした近未来での出来事。黒澤明の映画のモチーフがたくさん登場する。人(犬)物構成もそうだし、早坂文雄が作曲した「七人の侍」の音楽はそのまま用いられている。

アンダーソンは黒澤だけでなく、沈黙の使い方や自然の描き方などについて宮崎駿からも多大に影響を受けているらしい。 沈黙のなか、アップの犬の表情が映る。その毛が風に揺れる。確かに宮崎映画を彷彿とさせるシーンがたくさん出てくる。さらには、本多猪四郎の東宝特撮怪獣映画からの影響も見て取れる。

ヨーコ・オノという名の科学者助手の声は、あのオノ・ヨーコが。全編を通じて登場する通訳者ネルソンという女性の声が、あの「スリー・ビルボード」のフランシス・マクドーマンドだとは最後まで気がつかなかったけど。