2024年12月3日

石岡瑛子 I デザイン

最近の広告は面白くない。形だけ整えているだけで、表現としては死んでいるも同然。

まだ作り手の中には意欲を持ち、ビジネスの手段としての広告と表現物としての広告のせめぎ合いを買って出る志のある人もいるはず。しかし、企業(広告主)のなかからそうした度量と知性のある人間がいつの間にか消えてしまったようだ。

スマホのちっぽけな画面のなかですべてを満足させられてしまっているうちに、思考も視野も拡がりをなくしてしまったというのもある。

つまんねーなー、と思っていた矢先、石岡瑛子(1938-2012)の回顧展(石岡瑛子 I デザイン)が兵庫県立美術館で開催されているのを知り、なんとか会期の最終日に三宮の県立美術館へ足を運んだ。

彼女はグラフィック・デザイナー、アート・ディレクター、衣装デザイナー、プロダクション・デザイナーと、広告だけでなく書籍や雑誌の装丁、商品のパッケージデザイン、映画や舞台の衣装、同じく映画や舞台の舞台美術全般にわたる、アートに関しての幅広い実に多種多様な仕事をしている。
https://tatsukimura.blogspot.com/2012/07/mishima.html

そうした膨大な仕事量を沸き立つような熱量で精緻にかつ大胆に仕上げているクオリティの高さには目を見張る。

今回の展示品は60年代から80年代の広告と出版に関するものが多かった。さすがにパルコの一連の広告に添えられたコピーは今ではすっかり古くさいが、石岡のアート・ディレクションは今でも刺激的だ。