袴田巌さんの再審での無罪判決の確定を受けて行われていた、当時の捜査に関する検証結果を最高検察庁が公表した。
その報告書のなかで、最高検察庁が奇妙なことを言っているのが引っ掛かかる。犯行時の着衣として検察が有罪の根拠とした「5点の衣類」についてのことである。
例の5点の衣類 |
ことし9月、静岡地方裁判所は再審で無罪の判決を言い渡し、有罪の拠りどころとされてきたこれら5点の衣類について捜査機関がねつ造したと指摘した。
だが、検察側は今回の報告書でそれは「現実的にありえない」と強く否定した。
技術的にありえないとか、時間的にありえない、といった言い方は方便としては可能かも知れないが、現実に向かって「現実的にありえない」とはどういう意味か、日本語の理解に苦しむ。
このところ検察庁内での不祥事が続いているが、ひょっとするとこうした不適切な日本語(言葉)をおかしいとも感じなくなっている感覚がそのベースにあるのかもしれない。
いや、それだけではない。捏造を認めたら、次はそれを誰が指示したかを世間から問われることになるのを怖れ、組織防衛のために嘘を承知で突っぱねていると考えるのが妥当か。
それにしても警察が袴田さんを容疑者として逮捕したのが1966年のこと。彼が死刑判決を受け、その後冤罪が明らかになり、無罪判決が確定するまでに58年がかかっている。
さすがにそこまで時間をかけてもらっては困るが、もう少しじっくり本気で検証をすべきだろう。自分たちのやった誤りはこれでさっさと幕引きとするつもりなのだろうが、国民の信頼はそれでは回復しない。