2024年6月4日

日本型ライドシェアという歪んだシステム

「日本型ライドシェア」と呼ばれる中途半端な制度がスタートしたが、その設計には基本的な問題がある。
 
この制度では、ドライバーはタクシー会社に雇用されるかたちで働くようになる。で、ガソリン代はドライバー持ちで、ドライバーの取り分は売り上げの約7割。つまり、上がりの約3割はタクシー会社が取る(配車アプリの提供企業にもいくらか流れるはず)。
 
タクシー会社がドライバーを「雇用」することで、彼らにはドライバーとしての研修等が施され、運用管理がなされるので乗客の安全性が確保されるからというのがタクシー会社が売上の3割を吸い取る理由になっている。
 
だが、タクシードライバーが基本的な接客の仕方を身につけるために必ずしもタクシー会社から研修を受ける必要があるのか。ないと思う。またドライバーがタクシー会社に雇用されていることと、安全が確保されることの関係性も薄い。
 
事故が起こった際の保証なんて話もあるのだろうが、それはタクシー会社であろうが個人であろうが、実際に事故が発生した際の処理を担当するのは保険会社である。
 
「日本型」という歪んだ制度のために、タクシー会社に「雇用」されるライドシェア・ドライバーには働き方の自由裁量度がなくなる。ライドシェアというシステムの根幹をなすものがなくなってしまう。
 
明らかに、こうした「日本型」ライドシェアはタクシー業界に配慮しすぎた制度だと云える。この「日本型」を強く主張しているのが、日本交通をはじめとするタクシー会社と国交省、自民党の「タクシー・ハイヤー議員連盟」(なんだそれ?)という政治家らしい。
 
そうした連中のせいで、UberやGrabといった海外で利用者が拡大している(つまり、顧客にとって便利な)ライドシェアでは当然のこととして行われているビジネスモデルの根幹が歪められている。
 
他国でのライドシェアのドライバーは自分の都合に合わせ、自分の裁量で働けるが、日本ではそうならない。そのせいで、現状ですでにライドシェア・ドライバーの確保が難しくなっているらしい。
 
こうしたやり方が続けば、一応かたちだけスタートした日本におけるライドシェアは機能しなくなり消えてしまうだろう。そして、それこそが日本のタクシー業界が期待しているところである。
 
一方、もし現行のやり方で利用者が拡大し、さらにそれにつれてドライバーの確保も可能となった場合、タクシー業者が売上の3割の上前をかすめ取るというやり方が「日本の実態に即している」とタクシー会社や一部の政治家は主張することになるのだろう。
 
つまり、この出来損ないの日本型ライドシェアの制度がうまく行こうが行くまいが、タクシー業界は損をしないという設計になっている。その傍らで不利益を被るのが利用者とライドシェアの仕事を希望しているドライバーたちである。
 
現在、ライドシェアが認められてるのは、東京23区などでは平日午前7〜10時、金曜と土曜の午後4〜7時台に限られている。
 
が、国土交通省は、雨が降った時や電車の遅延が発生した時には、ライドシェアを行える時間帯、運行エリアと運行台数を広げるよう検討するという。 
 
仕事ができるのは平日は朝7時からの3時間、金土は夕方4時からの3時間だけど縛っておきながら、雨が降ったら「出動せよ」と言ってるわけだ。
 
ライドシェアが無人の自働運転車ならともかく、人が「仕事」としてやるということを考えれば、あまりにもライドシェア・ドライバーを馬鹿にしてはいないか。 
 
 「嫌ならやらなきゃいい」という国交省とタクシー業界の裏の狙いが見え見えである。