先日、今年のカンヌ国際広告賞を受賞したiPhoneのCMをここで紹介したが、その後、元電通のCMクリエーターの杉山某が審査員として同フェスティバルに参加した経験を新聞紙面で語っていた。
私が今回、個人的に一番印象に残ったのが「Relax, it’s iPhone―R.I.P. Leon」と題されたアップルのCM。トカゲの世話を任されたペットシッターの男性が、夜のキッチンでカラダの硬直したトカゲを見つめている。なんとも言えない悲壮感をその表情に漂わせながら。どうやら暇を持て余したのか、イタズラをしている最中に、トカゲが死んでしまったよう。やがて彼は意を決して雇い主にiPhone14のメッセンジャーで悪いニュースを伝える。その瞬間、トカゲが突然息を吹き返し、ホッとしたペットシッターは商品の売りである「送信取り消し」機能を使ってメッセージを削除する。これら一連のシークエンスが絶妙な演出で映像化されていた。そのことで「リラックスしようよ」というメッセージがじんわり伝わってくる。
ははあ、そうだったのか・・・と。だが、このCMの登場人物がペットシッターだとか、今いる場所が夜のキッチンだとか、メールの送信先が彼の雇い主だとか、そうしたこと、このCMを見ている一般の視聴者がなんで知ることができよう。
そもそもテレビ番組でも映画でもないCMにタイトル(題)が必要か。広告賞のイベント会場で配布された審査用資料を一般読者に紹介して何の役に立つのか。こうしたことは業界内の雑談ネタにとどめておけばよい。解説も不要ってものだ。