2014年11月15日

仕事は粘り強く続けることが肝心

今日の番組のゲストは、ライターの最相葉月さん。


 彼女の名刺には肩書きがない。新聞などの媒体に書いた際には、ノンフィクション・ライターやノンフィクション作家と紹介(掲載)されることがあるけど、ご自分では単に「ライター」と名乗っている。そのことについては、彼女が今春だした『仕事の手帳』(日本経済新聞出版)の「はじめに」のところに軽くいきさつのようなことが書いてある。

彼女は、たまたま入った編集プロダクションで企業PR誌を編集する仕事につき、その後なんとなく人から頼まれるがままに自ら原稿を書くようになり、ライターとなった。

彼女がものを書く世界で名実ともに評価されるきっかけとなったのが、講談社ノンフィクション賞をとった『絶対音感』である。たまたまワインバーで飲んでいた時にこの言葉を耳にしたのが、このテーマに取り組むことになったきっかけである。

その頃のことを彼女は、「帰宅すると近所のマーケットで買った総菜を食べながら、六畳一間のアパートでカチカチとワープロを打った。経費は会社員時代の貯金を切り崩して捻出した。いま考えるとずいぶん大仰で恥ずかしいが、あの頃はここで挫けたらあとはない、この原稿が完成したら死んでもいいとまで思いつめていた」 と書かれている。

ぜひこの人から話を聞いてみたいと思った。


彼女はこれまでに『絶対音感』『青いバラ』『セラピスト』『星新一』など、数々のすぐれた作品を発表されている。

いずれもノンフィクションであり、綿密な取材を重ねてこそ書き上げることができるものだ。『星新一 1001話をつくった人』では130人以上、『絶対音感』では200人を超える相手にインタビューやら取材が行われている。

彼女は、ライターとしてそれをひとりでこなす。手紙やメールで見知らぬ相手にインタビューを申し込み、依頼を断られることも多々あるらしいが、それでもその人の話をどうしても聞く必要がある時は、その旨を再度相手に伝え取材に応じてもらえるように働きかける。

当然ながら対談集を作るのが目的ではないので、人の話を聞くのは重要でありながらもデータをあつめるための一つの作業。『星新一』のときは、彼の文学上の位置づけを確認するために日本の戦後の文学を総ざらいするような膨大な作業もやられたとか。その粘り強さが、すぐれた作品を産む源である。


今朝の一曲に選んだのは、サラ・ヴォーンの「オータム・イン・ニューヨーク」。