大隈講堂で『帰って来た寺山修司―早稲田篇』と題した映画の上映会とトークイベントがあった。今年は寺山の没後30年である。
実験的映画『影の映画 二頭女』と『ローラ』、そして途中会場を抜け出した後、最後のトークセッションを見た。
九條今日子や萩原朔美が語る寺山をめぐる話も興味深いものだったが、とりわけ早稲田の学生時代から深い交流があった山田太一の話が印象に残った。
まだ自分たちが何ものでもない頃、お互いの才能を認め合うことになる若者がひょんなきっかけで出会い、親友となり、互いに大きな影響を受けながら成長していく。将来の可能性だけを頼りに自分の道を突き進んでいた幸せな学生時代である。
松竹の助監督からテレビの脚本家になった山田が「早春スケッチブック」という番組をフジのために書いていた頃の話。主人公である死にゆく男を山崎努が演じていた番組だが、毎週その番組が流れた後に寺山が電話をしてきて、脚本の出来について話したという。
今なら番組を録画しておいて後で見ることができる。わざわざ番組が終わったあとに電話しなくても、メールを送ることができる。だけど、山田太一が寺山の話を今も印象深く覚えているのは、自分の番組が放映された後にすぐに電話をかけてきて熱っぽく語られたからだろう。
印象に残るコミュニケーションとは何か、少し考えた。