しばらく前の新聞に、都内のある学習塾がTポイントを導入するという記事が載っていた。そこに通う生徒にカードを配布し、授業に出席したらその子に1ポイント(1円)、テキストを終えると100ポイント(100円)付与するなどの仕組みである。
子どもに勉強させるインセンティブとして、こうしたポイント制が導入されたことをどう理解すればいいのか。これを考えた大人たちは「子どもにとってはただのゲーム感覚ですよ」といった回答をきっと返すのだろう。
小中学生に内発的動機づけを期待することが難しいのは分かる。目に見える「報酬」(アメ)をぶら下げることで、とりあえずやる気にさせる必要性を大人たちが感じているのも理解できないではない。しかし、こうして子どもたちは、生徒あるいは学生という名の「消費者」として勘違いの度合いを深めていくことになることを忘れてはいけない。
その結果、彼らは勉強に目先の見返りを求める。つまり、消費者として対価を欲しがるようになっていく。数学の方程式を解いたり、英語の文法を覚えることでいったい何を得することができるのかと。こうして学校の勉強が、親にとっても子どもにとってもますます実利主義の対象になっていく。
そんなことを思っていたら、佐賀県武雄市が民間企業(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)に運営を委託して今春オープンした図書館では、Tポイントカードを図書館カードとしても使え、一冊本を借りると3ポイント(3円)が付く方式にしたらしい。一般的な図書館利用者は、その3ポイント(3円)目的に本を借りるというのはそれほどないかもしれないが、「せっかく借りるのならポイントが付いた方がいい」と考えるかもしれない。
こうして読んだ本、借りた本の情報が一企業のデータベースに蓄積されていく。頭の中の引き出しを彼らに公開しているようなものである。