2019年11月9日

比肩なき和田誠さんのことを想う

和田誠さんが亡くなってひと月ほどが過ぎた。
1977年から表紙のイラストを描いていた週刊文春が彼の特集を組んだのはもちろんのこと、このひと月あまりで新聞やら雑誌やらネット上でも、いろんな人が和田さんが亡くなられたことを悼むコメントを出している。
イラストレーターとしてグラフィックデザイナーとして、また絵本作家として、さらには映画監督としても活躍した人だった。もちろんこれまでやってきた膨大な仕事の量だけでもなく、その上質な独特の表現にひかれた人はたくさんいる。僕もそのひとり。
いま部屋の本棚をざっと見回しただけでも、和田さんが装丁したのが分かる本は『お楽しみはこれからだ』シリーズや『ニール・サイモン戯曲集』、谷川俊太郎さんの数多くの詩集、そして『パパラギ』などいくつもある。
もうほんとに才能豊かな人で、絵筆の仕事だけでなく、音楽や映画にも詳しかった。文章も彼ならではのスタイルを持っていた。文章のファンも多かったはずだ。
もう和田さんのような人は出てこないんだろうなあ。
若い頃にベン・シャーンに憧れていたと、昔何かで読んだことがある。もう何十年も前のことだけど。確かにデビューの頃のイラストのタッチはベン・シャーンの日本版といった感じだった。
だけどそこに留まることなく、すぐに誰もが一目で彼の作品だと分かる和田調というか和田ワールドを作っていった。
僕は彼に会ったことなどないけど、多くの人がそのあったかくて優しい人柄を振り返る。絵のタッチや文章が人柄そのままという、希有なアーティスト(作家と呼んだ方が相応しいか)だった。

下のイラストを研究室に飾った。