早稲田大学の演劇博物館ーー最近いろいろと旗色が悪い早稲田だが、日本の大学で演劇関係の資料をこれだけ取り揃え、また演劇を支えようとする志を持つ演劇専門の研究機関、博物館はここ以外にはないーーが主催するイベントで、SCOT(元早稲田小劇場)の鈴木忠志が登場するということで、楽しみに出かけた。
上映された「劇的なるものをめぐってⅡ」は、早稲田小劇場の舞台の練習を映像記録したもの。撮影されたのはいまから50年近い昔で、鈴木曰く、誰が撮影したか分からない・・・。
主演は当時28歳、芝居を初めてまだ3年という白石加代子である。既にその独特の怪演ぶりを十二分に発揮している。白石あっての鈴木という印象もなきにしもあらず。
鈴木は1939年生まれ。大学に6年在籍、27歳の時に自分が主催する劇団を創設、37歳の時に富山県利賀村に活動の本拠地を移し、それ以来ずっとその地で演劇活動を行っている。
30年ほど前、ある多目的ホールをオープンする仕事に携わっていた頃、鈴木が主催する演劇祭「利賀フェスティバル」を観に冨山を訪ねたことがある。人口数百人という今でいう過疎の村で、村の民家に泊めてもらったことを思い出した。
夜間に屋外劇場で行われた芝居、確か鈴木版の「ディオニソス」だったと思うが、不思議な静かな熱狂感を感じたことを記憶している。
昨日の上映会の後は、鈴木と演劇評論家の渡辺保の対談があった。鈴木は79歳にして、傍目からは衰えることを知らぬ人物である。「ま、なんでも聞いてくれ」から始まったが、実にとうとうと、かつこんこんと自説をまくし立てる。 芝居への圧倒的な知識と経験、尽きぬ情熱が伝わってくる。
今の歌舞伎や能の役者に対して並々ならぬ不満があるようだが、そうしたことに話が流れようとすると渡辺が巧みに路線をもどす。演劇評論家として全方位を相手にしていたい立場からの「忖度」だろうが、そこが物足りなかった。
下記のリンクは鈴木が2015年に書いた文章のひとつだが、彼流のレトリックとはいえ、そこに書かれている「ヤリチホウダイ」やり、しかし「イノチガケ」で臨むその姿勢は今も健在であることを確認した夜。命がけという言葉について何年ぶりかで考えさせられた。
http://www.scot-suzukicompany.com/blog/suzuki/2015-09/#blog000221
終わって外に出たら、あたりは真っ暗だった |