2023年10月12日

彼はいつまで日本にいてくれるだろう

7年ほど前に僕のゼミを修了した留学生が研究室を訪ねて来た。元気そうな様子。母国に帰らず、日本で職に就いてそこで頑張っている。今の会社での待遇などには必ずしも満足しているわけではないようだが、日本が好きだからという。

真面目で勤勉。しっかりものを考えることができるし、人のことに想いを寄せられる。ほぼ連日残業をこなしているとかで、その日も彼が研究室にやって来たのは午後7時半を過ぎていた。

ときおり研究室にやって来る彼らと話をしていると、こうした優れた外国の若者がいつまで日本に興味をもってくれるのか考えてしまう。

ただ稼ぐだけであれば、間違いなくさっさと母国に戻った方がいいに違いない。一人当たりの平均賃金はすでに日本を優に超えている。母国にはない何かを、まだ日本に感じてくれているのかも知れない。

経済の凋落が続く日本が大切にしなければならないものがまだあるということか。ただそれが、単なる近視眼的な観点からの観光資源であってはならない。

日本で「観光立国」という言葉が登場して久しいが、それを喧伝している連中の多くは手っ取り早く儲けることしか考えていない。

そうした彼らが口にする「観光立国」という言葉を聞くたび、日本の風景も、食も、歴史も、文化も、人のもてなしも、すべてカネを稼ぐための「資源」としか考えない表層的な薄っぺらさを感じる。