2018年8月15日

ドローンの可能性は多彩だ

先日、番組名は忘れてしまったがNHK-BSで日本の北アルプスをドローンによって上空から眺めていくという番組を見た。実に雄大で清々しい映像に魅了された。
人が歩きながらでは絶対に見ることができないいくつもの風景とアングル。深く切れ入った谷間の奥底の様子や伸びやかな稜線の流れなども、ドローンのカメラで自在に見ることができる。
また、その落差300メートルにも及ぶ巨大な瀑布をその滝口から滝壺まで、まるで水の飛沫をあびるかのように近接した距離で下っていくような映像すら見ることができた。これまでに我々が見ることができなかった全く新しい経験である。
これまでも空撮という撮影手法はあった。それらはたいていヘリからのものだ。以前ある外資系企業でブランドマネージャーをしていた時、テレビコマーシャルの仕事でニューヨークの摩天楼の夜を撮影するということがあった。
撮影していたCMの中で、夜景をバックに上空からブルックリン・ブリッジにぐっと寄っていき、そのまま橋の下をくぐり、抜けたところでマンハッタンの摩天楼を見下ろしながら一気に空に向けて上昇するシーンがあった。
きわどいシーンであり、今思えばよく撮影許可が出たなと思うが、さすがニューヨークは映画の都である。撮影クルーを乗せたヘリを操縦したのは、かつてベトナム戦争で攻撃用ヘリの操縦桿を握っていた元アメリカ空軍の名うてのパイロット。おかげで非常にダイナミックでかつスリリングな映像を撮ることができた。
だが今は、そうした大がかりな事をする必要はない。リモコンでドローンを飛ばせばいいのだ。
さてそのNHKの番組であるが、撮影隊が使っていたのは中国DJI社のファントムというドローンである。おそらく今ドローンの世界で最もポピュラーかつ先進的なマシンがこのDJI製ということになる。
日本製はいったいどうしたんだろう。モーターやセンサー技術、制御技術、精密加工技術といったものは日本にも充分あるはず。そうした優れた要素技術がありながら、製品としてのドローンを世界に向けて発売できなかった理由の一つは、開発者がそうしたものを作っても実際に飛ばして実験を繰り返すことができなかったからではないだろうか。
日本の規制(航空法)がそうしたことを認めていない。コンピュータで設計したものも最終的には実際に繰り返し飛ばして初めて気がつくことが多々あるに違いない。そうした現場から得た知見をどんどん取り入れてフィードバックしていくことで製品の完成度が高まっていく。
中国はそのあたり、日本に比べると遥かに開放的というか斬新的な手法で開発を進めていくことができる。なんせ土地が広い、そして役所さえOKと言えばどこでだって実証実験はできる(はず)。この違いはこれまでになかった新しいものを生みだし、製品化していくスピード感を考えた場合、とても大きな違いとなってはね返ってくる。
カーシェアもそうだが、日本がつまらぬこれまでの既得権にがんじがらめに絡め取られた規制を保っている限り、アメリカに追いつくことはおろか、早晩中国にも様々な技術や製品やサービスで追い抜かれていくのは間違いないように思えてならない。

それにしても、世界中でほぼスタンダートになった中国製のドローンが、撮影用カメラの代わりに人を殺傷する武器を積んで我々の頭の上を飛び回る時代が来ないことを祈りたい。

*以下追記 2018/08/16
調べたら、番組は昨年放送されたものの再放送だった。
http://www4.nhk.or.jp/P4999/3/