2013年5月27日

緑の長谷寺

学会出張で京都へ行ったついでに、奈良まで足を伸ばして長谷寺に詣でてきた。花の寺として有名な山あいの寺である。ここ桜井の長谷寺は、全国に240ほどある長谷寺の総本山であり、『枕草子』『源氏物語』『更級日記』など多くの古典文学にも登場する。

今日、九州と中四国地方ははや梅雨入りしたらしいが、今日の大和地方は清々しい天気で、緑がいっそう鮮やか。人も少なく、静かな雰囲気だった。






2013年5月24日

再生すべき対象は誰か

小学校での英語の授業が正式科目となり、4年生から教えられるようになるらしい。現在は5年、6年生で教えられているが、正式の科目ではない。
教育現場では戸惑いの声が大きい。担当する小学校の先生には英語が専門の人はほとんどいないはずだから当然だろう。教える方にも、教わる方にも無理が大きすぎる。

提案をまとめた政府の教育再生実行会議の座長であるW大学の総長は、同大が昨年サンフランシスコに事務所を開設した際、現地で提携校の学長などを招いて開催した開所式で日本語で挨拶をした。わずか5分ほどのスピーチだったらしい。事前に周りの関係者からは、せっかくだから英語で、という声があったにも かかわらず、結局わざわざ通訳を使って日本語で話すことを選んだらしい。

こうした人物が座長を努める集まりがグローバル人材の早期育成を唱え、そのため小学校で英語を教えろと言っているのが日本の現実である。
 


 

2013年5月20日

ポイント獲得の行方

しばらく前の新聞に、都内のある学習塾がTポイントを導入するという記事が載っていた。そこに通う生徒にカードを配布し、授業に出席したらその子に1ポイント(1円)、テキストを終えると100ポイント(100円)付与するなどの仕組みである。

子どもに勉強させるインセンティブとして、こうしたポイント制が導入されたことをどう理解すればいいのか。これを考えた大人たちは「子どもにとってはただのゲーム感覚ですよ」といった回答をきっと返すのだろう。

小中学生に内発的動機づけを期待することが難しいのは分かる。目に見える「報酬」(アメ)をぶら下げることで、とりあえずやる気にさせる必要性を大人たちが感じているのも理解できないではない。しかし、こうして子どもたちは、生徒あるいは学生という名の「消費者」として勘違いの度合いを深めていくことになることを忘れてはいけない。

その結果、彼らは勉強に目先の見返りを求める。つまり、消費者として対価を欲しがるようになっていく。数学の方程式を解いたり、英語の文法を覚えることでいったい何を得することができるのかと。こうして学校の勉強が、親にとっても子どもにとってもますます実利主義の対象になっていく。

そんなことを思っていたら、佐賀県武雄市が民間企業(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)に運営を委託して今春オープンした図書館では、Tポイントカードを図書館カードとしても使え、一冊本を借りると3ポイント(3円)が付く方式にしたらしい。一般的な図書館利用者は、その3ポイント(3円)目的に本を借りるというのはそれほどないかもしれないが、「せっかく借りるのならポイントが付いた方がいい」と考えるかもしれない。

こうして読んだ本、借りた本の情報が一企業のデータベースに蓄積されていく。頭の中の引き出しを彼らに公開しているようなものである。


2013年5月14日

レミング

先週末に大隈講堂で開催されたイベントをきっかけに、パルコ劇場で公演されている「レミング 〜世界の涯まで連れてって〜」を観に行った。


「満員御礼」である。観客の半分以上は、寺山が亡くなった後に生まれた世代。亡くなって30年。時が経つとともに、ますますその注目度が高まってきているように感じる。

2013年5月12日

寺山はいつだって帰ってくる

大隈講堂で『帰って来た寺山修司―早稲田篇』と題した映画の上映会とトークイベントがあった。今年は寺山の没後30年である。

実験的映画『影の映画 二頭女』と『ローラ』、そして途中会場を抜け出した後、最後のトークセッションを見た。


九條今日子や萩原朔美が語る寺山をめぐる話も興味深いものだったが、とりわけ早稲田の学生時代から深い交流があった山田太一の話が印象に残った。

まだ自分たちが何ものでもない頃、お互いの才能を認め合うことになる若者がひょんなきっかけで出会い、親友となり、互いに大きな影響を受けながら成長していく。将来の可能性だけを頼りに自分の道を突き進んでいた幸せな学生時代である。

松竹の助監督からテレビの脚本家になった山田が「早春スケッチブック」という番組をフジのために書いていた頃の話。主人公である死にゆく男を山崎努が演じていた番組だが、毎週その番組が流れた後に寺山が電話をしてきて、脚本の出来について話したという。

今なら番組を録画しておいて後で見ることができる。わざわざ番組が終わったあとに電話しなくても、メールを送ることができる。だけど、山田太一が寺山の話を今も印象深く覚えているのは、自分の番組が放映された後にすぐに電話をかけてきて熱っぽく語られたからだろう。

印象に残るコミュニケーションとは何か、少し考えた。

2013年5月4日

今年の瀬戸内国際芸術祭

3年おきに開催される予定で2010年に始まった瀬戸内国際芸術祭の第2回目が、今年開催されている。前回は夏だけの開催だったが、今年は春、夏、秋の3つの季節で開催される。

前回の作品展示をベースに、参加する瀬戸内海の島が増えたこともあって新たな作品もずいぶん加わった。

駆け足だったが、連休を使って開催地の一つである豊島を訪ねた。横尾忠則をテーマにした豊島横尾館は準備の関係で春の開催に間に合わなかったのは残念だっだが、その分、夏に訪ねる楽しみができたと考えればよいのかもしれない。
http://setouchi-artfest.jp/artwork/a018

島で早朝に散歩をしてる際、竹藪で竹細工をもとにした作品が展示されているのに出くわした。どうも本当は、それらは展示されているのではなく、制作途中のピースとしての竹玉が吊されている(地面に置くと自重でつぶれていくらしい)のだが、見方によっては既にアートである。




2013年5月3日

ハードはダメだが、ソフト(人)には感心

デルのノートブックが使えなくなった。起動時にOSが起ち上がらなくなったのだ。使い始めてちょうど2年になる。

ヘルプデスクに連絡すると、ハードディスクに関する問題で、交換しなければならないらしい。場合によってはマザーボードも。

交換用のハードディスクは日本国内発送の場合は2万円、海外からの場合は7千円らしい。費用の件はもちろんだが、ハードディスクの交換ともなれば当然PCは初期化されるので再設定が必要なだけでなくデータが失われることになる・・・。対応してくれた彼女は、どうするか検討して連絡してほしいと言う。

その彼女、中国人のスタッフである。話し方でそう思ったのではなく(話し方も確かに日本人とは異なっていたが)最初に彼女が名乗った名前が明らかに中国名だったからだ。

ふと思い出したのは、2年ほど前に大連で開催された世界経済フォーラム(夏季ダボス会議)からの帰途のフライトで隣に座っていた女性だ。デルのコールセンターの立ち上げの仕事で大連に3週間いた帰りだと言っていた。

電話の向こうの彼女に「あなたがいまいるところは大連ですか?」と尋ねたら、そうだとの答えが返ってきた。日本語は、ほぼ問題なく扱うことができる。頭も良さそうだ。デルのノートはハードディスクが2年でダメになるのか尋ねたら、買って一週間でダメになる場合もあるし、1ヵ月でダメになる場合もある、との回答。とても正直なのが気に入った。

電話を切って、別のパソコンでメールをチェックしたらさっきの彼女から既に電話で双方が話した内容が簡潔にまとめられた内容のメールが届いていた。押しつけがましさを感じさせず、こちらに金を支払わせるように上手に誘導していた。テンプレートがあるのだろうが、それにしても簡潔ですばやい対応に感心した。

デルのハードは信頼できないが、ヘルプデスクの対応はすばらしい。