2009年11月2日

「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか」

友人の妹尾堅一郎さんが新しく書いた本を送ってくれた。日本は技術力には今だ優れているのに、世界的なシェアを獲得するような製品を育てられないのはなぜか、という多くの人が疑問に感じていることを分かりやすく整理している。要約するならば、この本でのポイントは研究開発戦略、知財戦略、事業戦略の3点を一体的に実施することとしている。

世界を席巻したiPodと製品の技術面では優位と言われながら市場で負けたウォークマンの対比は、ビジネススクールでは古典的ともいえるケースになっているが、そうした例は近年枚挙にいとまがない。でもこうしたケースは、日本企業に限った話ではない。先日、韓国の現代自動車が日本市場から撤退することを決定したとの報道を読んだ。いまでは世界第5位の自動車メーカーが、日本市場では手も足も出なかったのはなぜか。

製造されたクルマの性能や品質が劣っているわけではないことは、JDパワーズの調査レポートなどが証明している。デザインか、価格か、ディーラーサポートか。理由はそれぞれ挙げることができるが、一言で言えば、理屈ではないというのが大きな理由ではないか。残念ながら「どうにも好かない」という消極的な日本人消費者の気持ちが最大の理由ではないかという気がする。

モノが売れるのにはワケがあるようで、ないような。簡単にそのワケが分かれば、誰もが大成功する訳であるが、そんな理屈はあり得ない。そこが顧客行動の厄介なところ。マーケティングが科学とアートを行ったり来たりしている所以である。