2020年10月3日

DXは、80年代のSISに似ている

DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を聞くと、1980年代後半から90年代によく耳にしたSIS(戦略的情報システム)という言葉を思い出す。

あの頃、日本ではNECが中心だったろうか、当時まだ業務用コンピュータの中心をしめていたメインフレームとそれを動かすアプリケーションを販売するために大規模な広告を通じてSISを世に知らしめた。
ある会社の社長が、部下に向かって「君、秋葉原に行ってSISを買ってきてくれ」と言ったとか言わなかったとか。
戦略的な情報システムがあるわけではない。情報システムを戦略的に活用するかという人間の思考があるだけだ。
最近巷でよく言われてるデジタル・トランスフォーメーションにも同じ匂いを感じる。デジタル・トランスフォーメーションという何か便利な仕組みや仕掛けがあり、それを組織に導入することで業務改革が実現できたり、競争力を高められるとでも言いたいような話が多い。
今まで手書きしてた社内メモをメールに替えるのもデジタル・トランスフォーメーションだ。情報をデジタルにし、使いやすくするというだけのこと。中身は変わらない。
デジタル情報を何のためにどのように使うかは、人間のアタマ次第。意味のないデジタル投資にいくら金を費やしても、それだけでは自社の競争力を高めることができないのは明らかである。
基本に立ち返り、自分たちのビジネスは何なのか、自分たちの顧客は誰なのか、顧客にどういった価値を競争相手より上手に提供できるのかを知り、そして目的と目標をはっきりした上で、初めて経営者はデジタル・トランスフォーメーションをどう使うか決めることができるはずだ。
新しい言葉に振り回され、周りに遅れまいとデジタル投資をしさえすれば自分たちの組織は戦略的に動き始め、自動的に利益をあげられるとひょっとしたら多くの日本の経営者たちは夢想してるのかもしれないが。