2023年9月19日

懐かしのコピーライター養成所

コピーライターから出発し、小説家として一家を成し、昨年からは日大の理事長でもある林真理子氏がある出版社のサイトに書いていた。

コピーライターの養成所に通っていた頃、講師をやっていた大手広告代理店勤務の人と2人で飲みに行ったら、「ホテルに行こう」と誘われたのです。 

今はその瞬間に「アウト!」という時代ですが、当時の私がまず思ったのは、「へー、私なんかを誘うんだ……」ということでした。さすがに「ありがたい」とまでは思いませんでしたが、「どうもどうも。恐れ入ります」みたいな感じで、全然腹が立ったりはしなかった。

 そうして、「一応、講師やってる立場で誘ったりしていいわけ?」「こういうのに乗ってくる女の子もいるんだろうなあ」という興味の方が勝ってしまい、「世の中ってこういうふうに回っているのかー。面白いなあ」と学ばせてもらったものです(一応お断りしておきますが、もちろんついて行かなかったですよ。まったく好みのタイプではありませんでしたし)。

彼女は僕の4つ上。大学卒業後にコピーライター養成所に通っていたという。僕も大学卒業した年にそこに通っていた。林さんとほぼ同じ頃だ。そこで思い出した。

コピーライター養成所で一緒だった同期の仲間たちとは結構親しくなり、銀座で行われていた授業が終わると必ずみんなで飲みに行ったり、終末にはドライブに行ったりして遊んでいた。いっしょに遊びながら、誰が一番最初にコピーライターとして有名になるかというライバル意識もみんな持っていたはず。

ある時、そのなかのY子が、電通のクリエーターで当時その学校で講師をしていたNから誘われて付き合っていると話し始めた。Nは業界ではそこそこ有名人だった。Y子はその後、Nの手引きで電通の関連会社にコピーライターとして入社した。

だが、僕が広告会社にいる間、彼女の話が広告クリエイティブの業界で流れてくることはなかった。彼女はその後、どうなったのだろう。元気でやっているのだろうかと、ふと気になっている。

2023年9月16日

西の人が長寿なのはなぜだろう

敬老の日が間近ということで、厚生労働省が全国の100歳以上の高齢者の概要について発表した。日本の最高齢者は、116歳とか。

人口10万人当たりの100歳超えの人の人数ランキングがあった。

  1. 島根(11年連続)
  2. 高知
  3. 鳥取
  4. 鹿児島
  5. 熊本
  6. 長野
  7. 山口
  8. 愛媛
  9. 宮崎
  10. 大分

九州から4県、中国地方から3県、四国から2県である。長野県を除けば、すべて西日本の県だ。

2023年9月15日

まるでオセロのように

つい2日前、ジャニーズ事務所の記者会見をきっかけとして、所属タレントに向ける社会の目が変わって彼らのCM利用に見直しがでてくるだろうと書いた。

だが正直、これほど次から次へとジャニーズ・タレントの契約解消がスポンサー企業から発表されるとは思わなかった。まるでオセロのゲームで、なにかのコマが裏返ったことをきっかけに、その周囲の様相が一変するという状況に似ている。これもまた日本的といえば、実に日本的な横並びの反応である。

それにしても、タレント契約見直しを発表した企業名リストを見ると、つくづく日本企業の広告は「タレントもの」が多いことを再確認させられる。その特徴は昔から変わっていない。

広告の表現形式としてタレント主導型のクリエイティブを一概に批判するつもりはないが、タレントの訴求力におんぶに抱っこで表現としてアイデアに欠けているのも、間違いなく日本の広告の特徴だといえる。 

同じコンビニチェーンのセブン・イレブンとファミリーマートの両社がどちらもジャニーズのタレントを同じ時期にプロモーションに使っていたなど、かつての業界の習わしだと考えられなかったが、いまはスポンサーの担当者がそうしたことを気にしないのだろう。「ブランド」の意味が分かっていない、あるいはそれを気にしていないということだ。

2023年9月14日

「させていただく」の真意

岸田首相の第2次内閣改造にあわせて行われた党人事によって選挙対策委員長とやらになった小渕優子議員が、13日の会見の場でドリル事件について問われ、

私自身、記者会見を開かせていただきました。あらためてお詫びと説明をさせていただき、質疑応答も時間(制限)なく、すべての質問に答えさせていただいて、できる限り誠意をもってお答えさせていただいた。

と回答した。

こういう人は、すべてにおいて「させていただいて」生きているのだなと感心する。フツーに「記者会見を開きました」「お詫びと説明をしました」「質問にお答えしました」としゃべれない理由でもあるのだろうか。

ところで、なぜ内閣は「再編」ではなく「改造」と呼ぶんだろうナ。改造とは、改めて造りかえるの意。何かあるとすぐに「適材適所」と言っていたのが、実は「不適材不適所」だったと自ら認めているような気がする。

企業では、組織再編とは言っても、組織改造とは一般に言わない。内閣って実際のところ何が特殊なんだろう・・・。と自問して、思い浮かんだのは、法務大臣だった人が今度、外務大臣になった不思議さ。

企業であれば、法務部門の責任者だった人物が海外営業本部の責任者にポジションが変わったようなものか。求められる適性と専門性が違いすぎる。

2023年9月12日

「児童虐待」がスポンサーを動かす

サントリーの新浪社長がジャニー喜多川による「チャイルド・アビューズ(児童虐待)」を批判し、今後ジャニーズ事務所のタレントをCMに起用しないと語った。



先日のジャニーズ事務所の社長交代の記者会見は、彼らが念入りに仕組んだ筋書き通りに進んでいたが、これで社会の空気が変わるかもしれない。

1つには、何と言っても日本を代表する大スポンサー企業がはっきりNOを明らかにしたこと。企業がCMに起用しないと言うことは、民放テレビの番組出演にも当然ながら影響する。

もうひとつは、これまでの争点が「性加害」だったのを、新浪氏は問題点として「チャイルド・アビューズ」をあげたこと。

日本人は欧米人に比べて性犯罪に対してどうも甘い、というかユルい。国民性といっていい。妙に大らか(過ぎる)である。そのためJ社の件についても日本人のなかには「そこまで目くじら立てるようなことではないのでは」という風潮があったように思う。50年近くもジャニー喜多川の性犯罪が黙殺されてきた所以だ。

だが、「児童虐待」となると話は別。印象が異なる。スポンサー企業は躊躇している暇はなく、厳しい姿勢と対応を社会に示すことが求められるはずである。たとえば、児童虐待を続けていた人物を社名に掲げるタレント事務所のタレントを、お菓子や飲み物の会社がCMに使うわけにはいかんだろう。

9/11から22年

ニューヨークのワールドトレードセンターが崩壊した9/11から22年になる。あの日、ハイジャックされたAA機とUA機が続いてビルに突入し、その後WTCが崩れ落ちたのが日本の午後23時頃。

筑紫さんがキャスターをしていた「ニュース23」が番組を延長して朝方まで状況を伝えていたのを覚えている。あれからすっかり世界が変わってしまった。

9/11の前年、2000年の大統領選の結果がいまも悩ましい。クリントン政権で副大統領をしていたアル・ゴアとジョージ・W・ブッシュ(Jr.)が戦った大統領選だ。例のフロリダ州での杜撰な選挙管理が禍して、結局高裁での判断までもつれ込んだ挙げ句、なぜか僅差でブッシュの勝利になった。

もしあのとき、ブッシュではなく、ゴアが米国大統領になっていたらと考えてしまう。その後の9/11も、それにともなう米軍のアフガン侵攻もイラク戦争(1991年にイラク相手に湾岸戦争を起こしたのは、当時の米大統領だったブッシュ(父)だった)もなかっただろう。それから15年後にトランプが大統領に押し出されるなんてこともなかった。

つくづく、ジョージ・ブッシュが23年前に米国の大統領になってしまった世界の不幸を呪う。彼は、今GOPで圧倒的支持を集めるトランプをどう見ているのだろう。たぶんトランプのことはおろか、なんにも考えていないかもしれない。フロリダで(昔そうだったように)アル中になってヨイヨイかも。

2023年9月11日

忖度はあなた方の無知、弱さだ

ジャニー喜多川こと喜多川擴(ひろむ)の性犯罪問題で、NHKが自らを含めた「メディアの責任を考える」という番組を流した。1つの節目を、週刊文春が報道したジャニー喜多川による性加害が高裁の判決で認められた2003年におき、その当時NHKと民放で番組制作(芸能部門)にいた人たちに取材をした結果を紹介していた。

つまりそれは、裁判で喜多川の性犯罪の判決が出たにもかかわらず、テレビ・プロデューサーらはそれをほとんど無視し、報道を怠り、ジャニーズにすり寄り続けていた時期だ。呆れた所業である

「タブーだった」「アンタッチャブルだった」「そういう(誤りを指摘をする)雰囲気はなかった」「清濁併せ飲んでやっていた」などの言葉が並ぶ。どれも、自分自身には責任はなく、周りの環境がそうだったから仕方がなかったと言っているのに等しい。容易に忖度に流れる日本のメディア関係者たちの姿がうかぶ。

信念などなく、メディアに携わる者としての矜恃を持たぬ連中。そういえば、局という所は、親などが政治家や芸能人でそのコネを使って入社する者のなんと多いことか。

タレントのマネジメント事務所が力を持ちすぎ、局の(エンタメ)制作部門に深く食い込み過ぎている。双方がどっぷり腐敗の海に浸かっている。

もうひとつ指摘しておかねばならない日本のメディアの特徴のひとつは、広告代理店の怪しさである。番組スポンサー、CMスポンサーへの配慮から、タレントやその事務所の不正を見て見ぬ振りをするだけでなく、スキャンダルは握りつぶしてきた。

倫理や社会的公正の意識の欠片もなく、ただカネのためにしか動かない代理店の人間たちが間違った形で力を持ちすぎている。いまもテレビ番組や映画の製作者として広告代理店が名前を連ねているのは、その証しである。そして、東京五輪での数々の贈収賄事件は、まだ我々の記憶に新しい。

それにしても、ジャニー喜多川の悪行がこれだけ明らかになったのに、株式会社ジャニーズ事務所は社長の交替を発表しただけで、ジャニー喜多川の名を冠した社名を変えないとはどういうことか。藤島ジュリー前社長は「してやったり」とほくそ笑んでいる。

 
 
彼女が社長を辞めても代表権を握ったままでは組織は絶対に変わらない。会社の株は100%彼女が保有したままだ。日々の実状を目の当たりにしながら、何も正そうとしなかったJ社の幹部らも一掃しなければだめだろう。

2023年9月7日

理容室のサイン

街中でよく見る、床屋の店先でぐるぐる回っているお馴染みのサインポールだが、こんな風に2つあると、なんかそれだけで面白い。早稲田通り沿いの理容室。

2023年9月5日

年寄りはメチャクチャなくらいがちょうどいい

現在公開中の『春に散る』は、沢木耕太郎の新聞小説を原作にした映画。

実は映画を見てから、原作の小説を手に取った。書棚の片隅に置いていたその本は2017年発行の初版本だった。

映画では初老の元ボクサーを演じる佐藤浩市の年齢は、おおよそのそれは推測できるがはっきりとは明らかにされていない。佐藤本人は63歳なので、それくらいかという印象だった。

小説で描かれた主人公、広岡は26歳で日本を出て米国に渡り、40年ぶりに初めて帰国したということなので66歳に設定されていた。66歳、微妙は年齢である。一昔前なら、もう現役の第一線から退いた引退者の一角を占めているわけだが、いまはどうなんだろう。

映画の中で印象的だった、佐藤浩市演じる元ウェルター級のボクサー広岡仁一が、若いボクサーの黒木に向けて放つ台詞がある。黒木から「言ってることがメチャクチャじゃねえか!」と言われ、広岡は「年寄りはメチャクチャなんだよ」と返す。この台詞は、沢木の原作には書かれていない。

前言を翻すといったことではなく、「今」を生きる感覚で、理屈ではなく直感的に判断をすると、そうなるのである。

世間の若い連中には理屈に従って秩序正しく真面目に生きてほしいが、俺たち年寄り(都合がいいときはそう言っておく)は好き勝手言って、好き勝手やって、メチャクチャなくらいがちょうどいいのである。

「春に散る」は、もうひとつの「あしたのジョー」だ。

2023年9月2日

TBSキャスターのヘンな言語感覚

昨日、テレ朝のキャスターのおかしな感覚について書いたが、今日は別のテレビ番組キャスターの奇妙な言葉遣いが気になった。

土曜夕方のTBS「報道特集」は、日本で珍しいまともなニュース報道番組だと思っている(ローカル番組は知らないから分からない)。

今晩、取り上げられていた特集のひとつは、福生市のある社団法人(名前は伏せられていた)が生活困窮者の救済を装って行政(福生市役所)との間に入り、彼らに生活保護者申請をさせ、その後、連んでいる不動産屋と共謀して普通の物件価格よりかなり高く設定された家賃(生活保護受給者に認められている上限価格ぴったり)のアパートに入居させ、更に免許証や保険証などを取り上げて動けなくし食い物にしているというヒドイ話だった。

経済弱者を狙った税金詐欺に、ほぼ間違いない。世の中には悪い奴らがいるもので、この番組で報道されなければ知る由はなかったケース。

番組のなかで村瀬という男性キャスターが、生活保護受給者を人質に取り不正な報酬を得ている、福生市にあるその社団法人と不動産業者による詐欺手口を「ビジネスモデル」と表現したのには驚いた。

気の利いた台詞を言ったつもりかもしれないが、これをビジネスモデルって言うか!? ちょっと感覚がズレすぎではないか。

2023年9月1日

組合のストを「異常」だと言い放つニュース・キャスターの異常さ

9月1日、当事者らが予定していたとおり、そごう・西武百貨店がセブン&アイ・ホールディングスによって米国の投資ファンドに売却された。

それに先だって、8月31日に西武百貨店の池袋本店で労働組合による終日のストライキが行われた。様子はメディアで幅広く報道されていたが、その理由はそうしたストがいまどき珍しいからということらしい。

昨日、たまたまは出先で夜10時からのテレビ朝日のニュースを見てたのだが、以前NHKで夜9時のニュース番組のキャスターをやっていた大越健介という男が、「なぜ、こうした異常な事態に陥ってしまったのでしょうか」と賢しらなコメントを述べていた。

最初、異常な事態なんて言うから、組合の猛者が会社の社長を拘束して会議室に軟禁でもしたのかと思ったけど、何のことはない。予定していたストライキを予定通り実施しただけの話だった。

組合がスト(ストライキ行使)を行うのは、憲法で保証された権利の一つ。それを「異常な事態」だと発言するのはどうかしている。労働運動をとんでもない行為か何かだと考えているのだろう。異常なのは、このニュースキャスターと番組である。

そういえば、同キャスターがその前日の放送で沢木耕太郎氏にインタビューしていた。今度映画化された沢木の『春が散る』を取り上げて、「〜を読ませていただきました」「映画を見させていただきます」と当たり前のように発言していた。また「させていただく」だ。言葉がじつに貧困。

2023年8月24日

理解していないのに賛成できるのはなぜ

福島原発の「要処理水」——政府や東電はその水を「処理水」と呼んでいるが、処理済みではない——が今日から福島沖に海洋放出される。

関係者の同意がなければ放出しないと言っておきながら、いざとなったら無視。自分たちの既定路線に沿って、放出の準備は以前から進められていた。五輪招致の時、安倍元首相は「アンダー・コントロール」と世界に向けて言ったが、汚染水が日々貯まり続け、その保存場所がいずれなくなる事は最初から分かっていた。

投棄する場所は海中と大気中の2つの選択肢があるが、大気中へ放出するプランはどれくらい真剣に検討したのだろう(米国のスリーマイル島の原発事故のケースでは、大気放出が選ばれている)。今回、2つの方法の是非はどれくらい科学的に議論したのだろう。

海の方が国民の同意を得やすいという理由で、当初から「海中放出」が国の考えにあったように思える。というのは、「大気中へ放出」より「福島沖の海へ放出」の方が国民にとっては「自分には直接の影響がなさそう」と思えるからだ。自分ごと感が圧倒的に薄くなる。

海水で1200倍に希釈すれば、トリチウムが基準値以下になるから海洋放出しても構わないという理屈が分からない。ほとんど無尽蔵の海水で薄めれば、何だっていくらでも薄められる。だが、いくら薄めても元の放射性物質の量は変わらない。

トリチウムを水に流して捨てるのではなく、そもそも除去する技術はないのか。研究はどこまで進んでいるのか。その技術を人類が持てない限り、原発はやはり不適切なのではないか。

汚染水の放出期間は「30年ほど」と発表されているが、政府が今30年と言っているということは、実際はそれでは決して終わらないということ。50年か、70年か、いや100年経っても終了しない可能性が極めて大きい。なぜなら原発を廃炉できなければ今の汚染水は止まらないから。

格納容器に溜まった燃料デブリを冷やすための汚染水は、日々増え続けている。そして福島第一にある880トンのデブリは、まだ1gたりとも取り出せてない(取り出せたとしても、それをどこに保存する?)。つまり、現状では汚染水は<半永久的>に増え続けるということ、トリチウムの海洋放出もほぼ永久に続くと考えるのが妥当だ。岸田首相が「私が最後まで全責任を負って・・・」なんていくら言っても、その頃にはもうみんな死んじゃってる。

海洋放出についての国の説明について、国民の7割が不十分なままだと言いながら、5割以上が海洋放出に賛成しているのも不思議。みんな「人ごと」だからと思考が停止しているように思える。忘れやすく、お上に言われたことに対して盲目的に追従しがちな日本人の国民性を政府も東電もよく知っている。

安全だと主張し海洋放出するなら、東京湾に流したらいい。そしたら、国民(特に東京都民、神奈川県民、千葉県民ら)はもう少し真剣に考えるようになるじゃないかね。

ただそこのところで韓国や中国など、周辺の国の人々は日本人とは違う。たとえばBBCの報道では、そうした国の感情としてAngerとAxietyを指摘していた。元々の国民感情もある。それをほぐすための説明は十分になされたのか。なされてはいない。こうしたことは、理屈だけで安全だから安心しろって言っても無理だ。

https://www.bbc.com/news/live/world-asia-66599189

2023年8月13日

「戦う覚悟」と「言う覚悟」

先日、自民党副総裁の麻生太郎が台湾でまたやらかした。台湾有事に際して「戦う覚悟」が必要だとして、「いざとなったら防衛力を使う」と前のめりに宣言したらしい。

台湾海峡で争いが起こったからといって、それに日本が自衛隊を送り威力を行使するのは日本の憲法に反しているだけでなく、国際条約もそんなことは認めていない。

こうした分かりきったことをなぜ外国まで行って話すのだろう。理解が足らないのだろうが、どうもそれだけではないみたいだ。というのは、この麻生の発言を受けて、自民党の政調副会長がその発言を「政府内部を含め、調整した結果」だったと説明したから驚きだ。

自民党の連中が自分で「言う覚悟」がないものだから、麻生をたき付けて代わりに言わせた、というところか。のせる方も、のる方もアタマのネジがとんでいる。

いずれにせよ、もし戦争になったら一般市民は巻き込むな。あんたたちだけでやってくれ。自分が鉄砲担いで最前線に立てよな。

ただし、日本と中国の兵力には圧倒的な差があることは知っておいた方がよい。艦船数で2倍、戦闘機数で5倍、潜水艦数で3倍、人員の数では10倍の差がある。もちろん優っているのは相手国だ。それを知っていて「闘う覚悟がある」と宣言するのは、太平洋戦争に突入した昭和16年時の日本のトップと変わりがない。つまり、歴史から何も学んでいないということ。

本来は、実際の戦闘になどならないよう、外交や経済や文化といったソフトなパワーで周りの諸国と関係を閉じないようにするのが政治家の役目じゃないのか。

2023年8月12日

顧客のライフタイム・バリューを見込んだ人質価格戦略

アマゾンプライムの会費が、来月以降年4,900円から5,900円に変わる。2割強の値上げである。4,900円の前は、3,900円だった。

 
例によってアマゾン・ジャパンは値上げの理由を説明していない。だからか、メディアが気を遣って(?)その理由を解説しているのだが、それによると物流コストが上昇したのを吸収するためだと書いてある。本当か? だって、ヨドバシ・ドットコムは会費なんか取らずとも無料で配送してくれてるぞ。

世の中の多くの物の値段が上がっているという風潮への便乗だというのが、僕の見立てだ。新聞記者が、トラックドライバーの「2024年問題」などを引き合い出し、勝手な推量でアマゾンの値上げを容認するトーンの記事を書いているのは違和感が大だ。

プライム・ミュージックにしてもプライム・ビデオにしても、有料版のunlimitedへ強引に誘導しようとしたり、観たい映画に限って有料だったりして、だんだん使い勝手は悪くなっている。だが、アマゾン・フォトに写真を保存している限りは解約することはできない。こうやって「人質」をとって、利用者からカネを巻き上げる価格戦略の典型である。いずれ利用料は1万円あたりまでいくのだろう。

同様のスタイルで値上げしたのが、Evernoteだ。こちらは5,800円だった年会費をこの5月に9,300円に料金改定した。実に60%もの値上げである。大幅な値上げは腹立たしいが、こちらも大量のデータをこのサービスのクラウドに預けている以上はすぐには手を打てない。やはり人質作戦だ。

グーグルはグーグルで、利用者の不利益など関係なく勝手に利用規約を変更している。

確かにどれも利便性の高い、優れたサービスではあるが、利用者が簡単に離脱できないのをいいことに、一方的な値上げを繰り返されるのは本意ではない。いざとなったらこうしたサービスからいつでも離脱できる代替案だけは自分なりに用意しておきたい。

2023年8月10日

訪日外国人と渡航日本人

中国が、日本行きの団体旅行を解禁することを決め、その旨を在日中国大使館が外務省に対して文書で伝えた。

すでに中国は個人での日本への旅行は許可しているが、そのためには一定額以上の収入が必要になるなど、日本政府側のビザの発給条件がそれなりに厳しかった。しかし、団体旅行は申請条件がゆるいため、中国政府が日本への団体旅行を解禁すれば、かの国からの訪日観光客数が一気に増加するのは間違いない。

そうした動きを受けて、すでに百貨店や大手のドラッグ・ストア、ホテルなどの株価が上昇した。中国から大勢の観光客が日本に詰めかければ、そうした一部の観光、あるいは小売、運輸関係の業種は潤うことだろう。

だがその一方で、我々一般の国民から見れば、はっきり言っていろんなノイズがまた周りでいっきょに増してくるのかといささか心配になってくる。日本政府は、訪日外国人が増えることを経済的な面で歓迎しているのだろうが、それでいいのか。日本もそうした国になってしまったのかと嘆きたくなるのは僕だけだろうか。

この10年で所得の上昇にともない海外に旅行に出かける中国人が世界中で増加した。その恩恵にあやかり、外貨を稼ぎ、経済を少しでも押し上げようというのが、日本の政府が期待してるところだ。裏を返せば、それしか日本の経済を保つ方策が残っていないと言うことなんだろう。日本はいつの間にかギリシャのようになってしまった。

新型コロナの最中、京都市内の四条通を歩いていたときのことだが、まだ夜の9時前だと言うのに僕たちの前にも後ろにもほとんど人がいなかった。なんだか妙な寂しさのようなものを感じたほどだったが、一方で京都のその大通りを独り占めしてるような不思議な快感があった。もう2度とそんなことを感じる機会は無いのだろう。
 
京都四条通、2020年9月撮影
 
ところで、「インバウンド」と行政などが呼んでいる海外からの外国人旅行者が増加する一方で、日本から海外に行く人数は伸びていない。理由は、ビジネスの商談がリモートで行われるようになったからではない。数字の上ではそれもあるが、日本人の実質的な賃金の減少と海外での物価上昇、そして何と言っても円安のインパクトが大きい。 

10年前、在外研究のためにNYに住んでいた時のアパートの家賃は2,850ドルだった。円ドルの為替レートは80円だったので月約23万円。その時現地で世話になった不動産屋の担当者に、今同じ部屋を借りるとしたらいくら位かメールで聞いてみたら、4,995ドルという返事が返ってきた。今のレートで計算すると月70万円以上である。つまり、この10年で円換算で3倍に上昇した。もちろん上がったのは家賃だけではない。すべてだ。
 
これはひとつの例だが、日本は海外からの観光客を呼び込むことはできても、自分たち(一般的な日本人)が海外へ行くことは、とても「贅沢」な時代になった。この事実は旅行者だけではなく、海外の大学への留学者数のさらなる減少も予想させる。それが中長期的にどういった影響をこの国に及ぼすかは、また改めて考える。

2023年8月7日

アマゾン・レビューの恣意性(続)

テストとして送った先日のレビューの内容を、サイト上の「編集」で本来のメッセージに書き直した。もともとのレビューが未だにアマゾンに無視されているからだ。

そうしたら、彼らから以下のようなメールが来た。投稿できませんでした、とある。

「すべてのお客様に関連性があるわけではありません」とあるが、冗談ではない。関係があると考えるからレビューにわざわざ書き込んでいる。

そもそも日本語になっていない奇妙な文章だ。だがそれもまた、彼らにとってはお構いなしなのだろう。

2023年8月6日

日本の自動車メーカーは中国車と世界で戦えるか

最新のグローバル・ブランド・ランキングによると、その上位20位にある日本企業はトヨタ一社(6位)である。かつては日本の銀行や通信会社、電機メーカーなどが上位に並んでいたが、今ではまるで様変わりし、見る影もなくなった。

そのトヨタの行く末を危ぶませるデータが公表された。今年前半(1月〜6月)の自動車輸出台数で、中国が日本を抜き初めて世界首位になったのである。
 
彼らの主な輸出先はヨーロッパ。徐々にヨーロッパ大陸で中国車が拡がりを見せている。特にEVは、極端なはなし、モーターとバッテリーとソフトウェアがあれば生産できるから、その面では中国はお手のものだ。EVの台頭に合わせてデザインも磨いてきている。
 
このままいくと輸出台数だけでなく、企業ブランドのプレゼンスでもトヨタは中国の自動車メーカー、例えばBYD(比亜迪)などの後塵を拝するようになるかもしれない。そうしたとき、一体この国には世界に太刀打ちできるものとして何が残るのだろうかと、一抹の不安を覚える。

2023年8月4日

アマゾン・レビューの恣意性(続)

購入した水のレビューを、安心して飲める、とかどうでもいいことを「テスト」としてアマゾンのレビューページに書いたら、すぐに掲載された。

 

だが、アマゾンのキャンセル・ポリシーの不適切さを指摘した先のレビュー内容はいまだに表示されないまま。自社に都合の悪いことは掲載しないようにしているわけだ。立派!

(追記 8月7日)
たまたまだが、「日本郵便の場合、大手事業者向けに、配送に7日程度の余裕を持たせる代わりに料金を1割前後割り引く料金体系がある」と記された新聞記事(日経)を読んだ。アマゾンは当然、ここでいう大手事業者に当たる。つまり今回の場合、アマゾンは彼らが支払う配送料を1割割り引かせるために、僕が注文した商品の発送をその分だけ遅らせたということだろう。だとすると顧客無視もいいとこ、ずいぶん勝手放題である。

2023年8月3日

アマゾン・レビューの恣意性

日々猛暑が続く。外出の機会が減る。特に日中はできるだけ炎天下を歩くのは避けている。買い物の機会も減った。

半月ほど前、ボトルの水をネットで購入した。アマゾンのサイトで1ケース分を発注。配送まで1週間と表示されている。少し長いな、と感じたが急ぐ商品ではないので気にせず注文した。

ところが1週間たっても届かない。アマゾンのサイトで「配送状況」を見たら、まだ配送手続きにもはいっておらず、その時点で配達予定日は注文から13日目になっていた。

これはアマゾンの不手際なので、サイト上から「配達予定日が遅すぎる」という理由を選択してキャンセルをし、ヨドバシ・ドットコムで同じ商品を注文した。値段は大差なし。商品は翌日に届いた。

ところがキャンセルしたその商品について「キャンセル不可」というメールがアマゾンから来た。おかしいね。発送していない商品はキャンセルできることはずなのだが。しかも、事前に知らされた配送日が、いつの間にか1週間から2週間に変更されていた。

メールにはキャンセルできないという理由として「発送準備に入っているため」と記されてはいるが、実際にその商品が来たのはそれから1週間後だったこと考えれば、それは事実ではなかったと考えるのが妥当だ。

客にはどうせ本当の事など分からないからどう繕っても平気、というアマゾンの方針なんだろう。 

今回の経緯をアマゾンのレビューに書いた。だが、5日たってもそれが掲載されない。自社に都合が悪いからだろうな。アマゾンもそんな企業になってしまったということか。

2023年8月2日

CMに解説は不要

先日、今年のカンヌ国際広告賞を受賞したiPhoneのCMをここで紹介したが、その後、元電通のCMクリエーターの杉山某が審査員として同フェスティバルに参加した経験を新聞紙面で語っていた。
私が今回、個人的に一番印象に残ったのが「Relax, it’s iPhone―R.I.P. Leon」と題されたアップルのCM。トカゲの世話を任されたペットシッターの男性が、夜のキッチンでカラダの硬直したトカゲを見つめている。なんとも言えない悲壮感をその表情に漂わせながら。どうやら暇を持て余したのか、イタズラをしている最中に、トカゲが死んでしまったよう。
 
やがて彼は意を決して雇い主にiPhone14のメッセンジャーで悪いニュースを伝える。その瞬間、トカゲが突然息を吹き返し、ホッとしたペットシッターは商品の売りである「送信取り消し」機能を使ってメッセージを削除する。これら一連のシークエンスが絶妙な演出で映像化されていた。そのことで「リラックスしようよ」というメッセージがじんわり伝わってくる。
ははあ、そうだったのか・・・と。だが、このCMの登場人物がペットシッターだとか、今いる場所が夜のキッチンだとか、メールの送信先が彼の雇い主だとか、そうしたこと、このCMを見ている一般の視聴者がなんで知ることができよう。
 
そもそもテレビ番組でも映画でもないCMにタイトル(題)が必要か。広告賞のイベント会場で配布された審査用資料を一般読者に紹介して何の役に立つのか。こうしたことは業界内の雑談ネタにとどめておけばよい。解説も不要ってものだ。