『文藝春秋』に財務事務次官の矢野氏が寄稿した「財務次官、モノ申す 『このままでは国家財政は破綻する』」が波紋を拡げているようだ。
この記事、分かりやすく十分納得のいくものである。数日前にこのブログで拡大が止まらない財政赤字について書いたとき、参考にさせてもらった。
彼が書くように、政治家は無為なバラマキ政策をあらためて、財政を立て直す意識を持たなければならないと思う。ジャカスカ国債を発行すればよいというものではない。恩恵にあずかる連中はウハウハだろうが、ツケは必ず後に回ってくる。誰かのところに。
後々の世代に思いを向ける意識が少しでもあれば、目の前に出されたマシュマロを後先考えずに口に放り込む愚かさに気づくと思うのだけど。
『文藝春秋』のその記事に、自民党政調会長の高市早苗が「大変失礼な言い方だ」とテレビ番組(NHK「日曜討論」)の中で噛みついた。
ん? 何言っているんだろう、この人。「失礼」とは
【失礼】礼儀を欠く振る舞いをする・こと(さま)。失敬。無作法。「―なことを言う」「―のないようにもてなす」「先日は―しました」「ちょっと前を―します」
つまり、彼女が「失礼」と感じたのは、役人が自分と違う考え方を口にしたことが彼女にとって礼儀を欠いていることを指している。
自分は違う考え方なのであれば、それを説明すればよい。立場の上下の問題ではない。彼女にとっては、自分と考えが異なる人は「失礼」な人になるんだろう。
また彼女は、続けてこんなことを語った。
基礎的財政支出にこだわって本当に困っている人を助けない。未来を担う子供たちに投資しない。こんな馬鹿げた話はない
ん? 困っている人を助けなくていいとか、子供への投資を控えるとか、そうした話は先の『文藝春秋』の記事中に一言も書かれてはいない。
どうやったら、こんなに思い込みが強くなるんだろう。
また、上記にあるように、彼女は「分配(政策)で消費マインドを高めていけば税収となって返ってくる。総合的に考えていただきたい」と言ったようだが、これまで散々バラマキをやっても消費マインドはあがっていない。
安倍が行った10万円一律給付がどのように使われたか検証したのか。仕事を長期間失った人や、子供を抱えたシングル・マザーなどの人たちの生活を一時救う手立てになったが、国民全体の消費マインドを刺激して経済成長を押し上げるようなことにはまったくつながっていない。
国民のおよそ7割は、それを貯えに回したとの調査結果がある。そりゃそうだろうな。小学生がお年玉をもらったのとは違うんだから。一方で、生活が立ちゆかず経済的な支援を心底必要としている人たちには、10万円ではあまりに少なすぎる。
必要としている人に、必要なものを、必要とする形で手助けする。政府は本気で、心してそれを実施するべきだろう。
菅が行ったGo To トラベルで商売が上向いた関係企業のほとんどは、一部の高級旅館や高級ホテルだった。その利用者はといえば、金も時間も十分にあるシニア世代が中心だ。税金で補填してやらなくても大丈夫な連中ばかりじゃないか。
一方、新型コロナ感染拡大の影響でアルバイトやパートの仕事を切られ、生活に困窮し始めた人たちは旅行など行けるはずもなく。また当然ながら、感染者と休みなく向き合って働いていた医療関係者にも、そんな夢のような話はまったく縁がなかった。
こうして1兆円を超す税金が捨てられたようなものだった。
これまでの税金を使った対策は、効果のほとんどない、ただの目先の対処療法的目くらまし対応で、単なる税金のバラマキ(無駄使い)だったわけだ。