トヨタ自動車が、12月15日から新型燃料自動車のMIRAIを発売を開始した。水素を燃料として用い、走行中に取り入れる空気と反応させることで発電し、モーターの力で走る。排出ガスはまったくないという。
水素を燃料とすることから、環境への負荷がとても低いと報道されている。燃料ステーションでの3分間の圧縮水素充填で650キロ走行可能という利便性も魅力的だ。
ふと、このクルマに触ってみたくなり、トヨタのディーラー本社へ電話した。最寄りのどこのディーラーにあるか確認するためである。電話に出た若い男性は、ちょっと困ったような感じで、まだどこのディーラーの店頭にもなく、またいつ来るかも分からないと冷たく告げた。だから、今はカタログだけで販売をしていると。クルマの実物は、お台場にあるメガウェブというショールームにしかないらしい。
てっきり販売店に展示車両くらいあると思っていたのが、そうではなかったわけだ。しかも、いま注文を受け付けても、納車まで3年ほどかかるという。だが、それでもすでに受注をいくつも受けていると教えてくれた。「それらのお客さんは、そのお台場にあるショールームで実車を確認したのだろうか」との質問には、おそらくほとんどの人はマスメディアやネット上の情報だけで申込をしてくれた方だとの答え。
値段は安くない。発注をした彼らは、いわゆる富裕層であることは間違いなく、またE.M. ロジャーズが Diffusion of Innovations で述べたイノベーター層(革新的採用者)の典型である。
ところでこのクルマ、メーカー希望小売価格が720万円程度なのだけど、あれやこれやで225万円ほどが値引き(優遇)されている。その内の202万円は、経済産業省主導による補助金である。
これらの補助金は、言うまでもなく税金からである。このクルマは確かに先進的で、国としては経済政策の一環として世界に先駈けて普及させたい考えなのだろうが、補助金が必要なのだろうか。
価格弾力性という考えがある。価格の変動によって、どれくらい需要が変動するかを示した数値であるが、この場合の価格弾力性はどうだろうか。僕は決して高くないと思っている。つまり、200万の補助金があるという理由で、追加的に購入を決める人はそれほど多くはない。200万円値引きしても、まだ500万円。クルマ1台にこの金額がポンと払えるのは高額所得者で、なおかつ珍し物の新し物ずき。700万円であっても構わない人たちである。そして、そうした連中は、それなりの数存在している。
それなのに経産省は、なぜ1台あたり200万円もの税金を投入するのか。
東日本大震災の被災地には、日々の生活に必要な軽自動車すら手に入れられない人だってたくさんいるに違いない。そっちはどうするのか。え? 担当省庁が違うからって?